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事例紹介

宅配便業界は、どこも本業の宅配便事業が伸び悩んでいる。とくに昨年来からの景気後退の影響で荷動きが鈍くなり、宅配便の取扱い個数は減少傾向にある。しかし、そのような状況の中で、通販支援サービスや業務代行サービス、金融支援サービスなど、宅配便事業で培ったノウハウと物流網(ネットワーク)を生かした周辺のサービス事業が成長し、収益の柱に育ちつつある。多くの宅配便事業者がいま、周辺のサービス事業を自社の屋台骨を支える事業の柱のひとつに育てて、厳しい生き残り競争に勝ち抜こうと積極的に展開している。

主に首都圏で事業を展開する宅配便事業者のA社は、最近成長が著しいインターネット通販に関連する各種サービス事業に力を入れている。というのも、インターネット通販市場は、不景気に負けず順調に成長しており、大手スーパーや百貨店なども注力している事業だからだ。A社は現在、通販事業者向けに各種決済機関との契約や関連業務を代行するサービスを提供している。具体的には、通販事業者が、自社の通販サイトにA社の決済サービス画面へのリンクを貼るだけで、サイト利用者はクレジットカードやコンビニエンストアでの支払いなどが可能になる。通販事業者にとっては、A社が各種決済機関との契約や関連業務を代行してくれることで、煩瑣な業務負担から解放されるメリットがある。そのため、中堅・中小規模の通販事業者に、こうした通販支援サービスが受け入れられている。

また、A社は金融支援サービスも進めている。中堅・中小規模の通販事業者の中には、最近の厳しい金融事情により、資金繰り(運転資金)に苦労している企業も多い。通販事業は商品を販売して代金を受け取るまで時間が掛かるため、その間をやりくりする資金が不足し、経営難に陥りやすい。こうした企業を対象に、銀行子会社やノンバンクが代金受け取りの約束(売掛債権)を買い取る「ファクタリングサービス」を提供しているが、A社もこのサービスを始めた。具体的には、自社との取引関係が長く信頼できる荷主企業に対して、ファクタリングサービスを提供したり、商品を担保に融資したりして、荷主企業の資金繰りを支援している。
そもそも物流会社は、物流取引を通じて荷主企業と顔を合わせ、絶えずコミュニケーションを図っており、また商品にも直に接しているため、荷主企業の経営状況などは常に確認できる。そのため、こうした金融支援サービスのリスクにも十分対応できるとA社は考えている。

さらに、A社は今後、業務代行サービスも展開していくという。最近、企業のリコール件数(製品の回収・修理)が増加しており、メーカは大きな負担を強いられている。そこで、A社がメーカに代わって、購入者の特定・連絡・回収・良品との交換など膨大な量のリコール作業を一括して代行するというわけだ。ただ、こうしたサービスはそれぞれの業務や製品の専門知識・ノウハウが必要であり、誰もが容易にできるわけではない。その点で、A社は物流業を通じてメーカとの取引も長く、すでにバックヤード事業なども手掛けているため、そういった経験や強みを発揮できる。

宅配便事業者にとっては、本業の宅配便事業がますます厳しくなる中で、周辺のサービス事業をいかに収益事業に育てていけるかが生き残りの重要な課題となる。(文・経済ジャーナリスト 野口 恒)

本業の宅配便事業が伸び悩む宅配便業界。周辺のサービス事業で生き残りを図る

(2009年1月26日掲載)