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事例紹介

中堅物流会社であるA社は、厳しい企業競争を勝ち抜くために経営トップのリーダーシップのもと、全社を挙げて物流業務の改善活動とサービス品質の向上に取り組んでいる。その背景には、物流業界で活発に行われている、企業の生き残りをかけたM&A(吸収合併)や業界再編がある。とくにA社のような中堅物流会社は、こうしたM&Aや業界再編の格好のターゲットになりやすい。そのため、A社は物流業務の改善とサービス品質の向上で競争力を一段と高め、生き残りを図ろうと全社活動に取り組み出した。

物流業務の改善では、トヨタ生産方式を導入してJIT(ジャスト・イン・タイム)物流の導入に取り組んでいる。トヨタ生産方式の真髄は、業務のムダをとことん省き、必要なものを、必要な時に、必要なだけ生産するジャスト・イン・タイム生産にあるが、この考え方や手法を物流部門に応用して物流効率化を実現しようというのが狙いである。一般に、物流部門はオートメーションによる自動化や省力化がかなり進んでいると思われている。しかし、実際の現場では人の作業領域が多くの部分を占めており、そのため物流の停滞やムダが絶えず発生している。A社ではこうした停滞やムダを省いて効率化を図るため、従業員の作業効率や得意分野のデータをきめ細かく分析して、人と作業の不適合によるムダを省き、効率的な人材の配分を行う改善活動に取り組んでいる。また、物流業務の見える化(目で見る管理)に取り組み、どの製品が、いつ、どれだけ、どこからどこに出荷されたか、モノの流れが一目で分かるようになっている。例えば、物流倉庫では製品を保管するすべての建物と棚にロケーション(番地・番号)が付けられていて、何が、どこに、どれだけあるのか、ロケーションを見れば一目で分かるようになっている。経営トップは、この物流改善活動を通じて徹底的な物流効率化を実現し、他社に負けない物流のローコストオペレーションのノウハウと仕組みを獲得したいと考えている。

さらに経営トップは、中堅物流企業が生き残るにはサービス品質の向上を図り、顧客満足を高めることが不可欠だと考えている。そのためには、従来の輸送・保管業務だけでなく、より付加価値の高い物流サービス業務を展開しなければならない。しかし、大手物流会社と同じように付加価値の高い3PL業務を大規模に展開することはできない。そこで、自社の特色が生かせる物流加工サービスや保守サービスに的を絞り、大手物流会社ができない独自サービスを提供することで顧客満足を高めようとした。例えば、それまで荷主企業が行っていた製品の付属品の取り付けやソフトのインストール作業など、簡単な加工業務を倉庫で行ったり、緊急性の高いIT関連製品については緊急時に対応した24時間365日サポート体制を提供するなど、顧客の荷主企業にとってメリットの大きいサービス業務の提供に的を絞っている。

A社はいま、物流業務にICタグの導入が普及したとき、物流業務の仕組みやプロセスがどう変り、それにより荷主企業のニーズがどう変わるかに注目している。ICタグが導入されれば貨物を一括して読み取りできるため、検品作業が大幅に短縮されるだけでなく、荷主企業とって在庫をリアルタイムで把握できる効果は絶大である。
ICタグの本格導入により、物流の仕組みは大きく改革される。A社の経営トップは、それによってどんなビジネスチャンスが生まれるかに大きな期待と関心を持っている。(文・経済ジャーナリスト 野口 恒)

中堅物流会社A社の生き残り経営

(2008年6月23日掲載)