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第9回 事例紹介

サービス業界では現在、多くの企業が顧客満足度(CS:カスタマー・サティスファクション)調査をマーケティングやサービスマネジメントの分析手法として活用している。それは、顧客満足を追求することが企業の売上増大・収益向上に貢献すると考えられているからだ。そのため、年に何度も顧客満足度調査を行い、そこで得られた大量のデータを分析・評価して、マーケティングやサービスマネジメントに生かそうと取り組んでいる。しかし、顧客満足度が企業の売上増大・収益向上にどれだけ貢献しているかは、その活用がまだ始まったばかりということもあり、明確な回答は得られていない。

ちなみに、現在、顧客満足度を計測する指標として次の7つの項目が上げられている。

  1. リピーター・離脱顧客の動向
  2. 既存顧客からの収入
  3. マーケットシェアの動向
  4. 顧客満足度調査の実施
  5. 顧客不満足(クレーム)調査の実施
  6. 製品・サービスに関する調査の実施
  7. 顧客満足度ランキング

これら指標とは別に、最近、NPS(純推薦顧客指数)と呼ばれる顧客満足度の計測方法が注目を集めている。NPSとは、米国コンサルタント会社のベイン&カンパニー社の名誉ディレクター、フレデリック・ライクヘルドが開発した計測方法で、英語のネット(Net:純)、プロモーター(Promoter:推奨者)、スコア(Score:指標)の頭文字をとったものである。基本的な考え方はいたって簡単で、「あなたは弊社を親友に推薦していただける可能性がどれだけありますか」という究極の質問を顧客に行う。その質問に対して、9〜10のスコアをつけた顧客は満足度の高い推薦顧客、7〜8はまあまあ満足の中立顧客、0〜6は満足していない非推薦顧客に分類する。NPSは、推薦顧客の割合から非推薦顧客の割合を差し引いた数値であり、従来の顧客のロイヤリティ指数よりも顧客の推薦指数を重視した考え方である。同社は、自社の膨大なサンプル調査から、NPSの数値と売上増大・収益向上が高い相関関係にあることを強調している。

A社は、首都圏を中心にテーマパークなど多様なエンターテイメント事業を展開する大手サービス会社である。同社は、5年ほど前から全社プロジェクトとしてCS経営に取り組んでいる。とくに営業やサービスの現場では定期的に顧客満足度調査を行って、そこで得られた大量のデータを分析・評価し、担当部門にフィードバックして業務改善や経営改革に生かしている。ただ、A社も、これだけコストや時間を掛けて行っている顧客満足度調査が企業の売上増大や収益向上にどれだけ貢献しているか、それを客観的な数値で示し、経営トップを説得できる明快な方法や数値がないのが悩みの種だった。従来の7つの指標だけでは十分でない。そこで、新たな方法・指標としてNPSの導入に踏み切った。
「経営トップからは、会議のたびに顧客満足度は収益向上に貢献しているのか、経営手法として有効か、よく質問されます。それに対する明快な回答はまだできていません。従来の計測指標だけでは十分でないことは明白です。そこで、今度NPSの計測方法を新たに導入して試してみようと思いました。モノの事業と違って、サービス経営の難しさはサービスという本来計測しにくいものを事業の柱に据えていることです。顧客満足度の計測手法が確立できれば、サービス業務や経営は格段にレベルアップします」とマーケティング担当者のB氏は語っている。
そんなB氏が注目しているのが、NPSの数値と売上・収益の成長率の相関関係である。相関関係が明確になれば、NPSの数値を上げることで、売上増大・収益向上に繋がる。米国では、GE、マイクロソフト、アメックス、ワコビア銀行などの企業でNPSが導入され、その有効性が発表されている。はたして、顧客満足度の計測手法としてNPSはどこまで有効か、自社の現場で検証したいとB氏は言う。計測手法が確立できればサービス経営が変わると、その期待は大きい。(文・経済ジャーナリスト 野口 恒)

顧客満足度を計測する手法と指標

(2008年9月1日掲載)