






|

経済ジャーナリストの野口 恒 氏が、業種・業務分野別に、業界動向やITの最新情報、活用事例等をレポートいたします。 → 一覧はこちら
(2007.5.14 Update)
|
業種別IT活用実践シリーズ−ITベンチャーのIT活用 第11回
1)最新動向〜経営理念のビジュアル化を図り、共通の価値観の育成と企業の社会的認知度向上に活用
2)事例研究〜これからは現場のエンドユーザがコンテンツ制作の主役
|
1) 最新動向
『経営理念のビジュアル化を図り、共通の価値観の育成と企業の社会的認知度向上に活用。大企業だけでなくIT系ベンチャー企業が積極的』
|
産業界では近年、ハイテク関連のベンチャー企業から重厚長大の大企業まで、ビジュアル技術を駆使した「経営理念の見える化」プロジェクトに取り組む企業が増えている。これには、創業者の経営哲学や経営理念を見直して、現在の環境変化に対応した新たな経営理念や経営方針を作り、社員全員に情報共有を図ると共に社外にも情報発信していく目的がある。
企業がこうした経営理念の見える化プロジェクトに取り組むのは、企業を取り巻く経営環境の大きな変化がある。たとえば、経済のグローバル化の進展、M&A(合併・吸収)の増加、新規事業創造と既存事業再編、団塊世代の大量退職、非正社員増加など雇用形態の多様化、環境リスクや経営リスクの増大など、企業はかつてない大きな変化に直面している。企業がそうした変化を乗り切って発展していくには、創業の原点である経営理念を見直し、新たなコーポレート・アイデンティティ(CI)を作り直す必要がある。それと同時に、自社の経営理念の見える化をビジュアル技術で分かり易く表現し、社員全員で情報共有すると共に、広報・IR・CSRなどのコミュニケーション活動を通じて社外にも積極的に情報発信することが大事になる。
日本では、経営理念や企業活動を分かり易く表現し、多くの人に伝え、理解され、信頼されることを目的としたコミュニケーション活動がこれまでほとんど行われてこなかった。しかし、最近では企業の対応も変わってきている。「自社に対する社会の認知度向上」と「社員の共通した価値観の共有・育成」を図るため、経営トップ自らがリーダーシップを発揮して、「経営理念の見える化」プロジェクトに取り組む企業が増えており、とくに、創業して10年から20年位しか経っていないIT系の若いベンチャー企業に多い。製造現場や業務部門の見える化プロジェクトはすでに多くの企業で行われているが、「経営理念の見える化」プロジェクトに取り組む企業はまだ少ない。
3年ほど前から、日本経団連は毎年2回、東京・大手町の経団連会館において「社史フォーラム」を開催している。毎回100〜200名の人たちが参加し、回を重ねるごとに参加者が増えている。こんなことはこれまでになかった事だ。参加者は大企業だけでなく、IT系ベンチャー企業も意外に多い。しかも、参加者は、社史編纂担当者はもちろんのこと、広報・宣伝・企画・社長室・IR・CSRなど、企業のコミュニケーション活動に関わるすべての人たちが参加している。
これまで、社史編纂というと何周年ごとに行われる、どちらかというと窓際仕事といった印象であった。実際、社史に対する社員の関心も低かった。しかし、最近になって社史に対するニーズが高まり、経営トップや社員の社史に対する認識も大きく変わってきた。例えば、トヨタ自動車、松下電器、日本電気、キャノン、ソニーなどの企業は新しい社史の編纂や、経営理念を分かり易くまとめた広報・出版活動に積極的だ(トヨタウェイ、松下ウェイ、ソニー自叙伝など)。社史は、経営トップが創業者の経営哲学や経営理念を見直して再構築する時や、社員が自社の創業の原点や事業活動の歴史を学習するのに最も重要な文献である。
さらに、デジタル技術を活用して、社史編纂の仕事を「経営理念の見える化」プロジェクトにきちんと位置付けて取り組む企業も増えている。最近注目されるのは、デジタル技術を駆使して「社史のデータベース化」が進んでいることである。映像化・ビジュアル化することで、メディアやインターネットを通じて、社内の情報共有だけでなく社外にも情報発信することができるからである。とくに、IT系ベンチャー企業は、創業してまだ歴史が浅いため、社員の共通した価値観の育成が十分でなく、自社に対する社会の認知度も相対的に低い。そのため、「経営理念の見える化」プロジェクトに積極的である。
創業20年を迎えたIT系ベンチャー企業のA社では、数年前から社史のデータベース化に取り組み、ビジュアル技術を駆使した社史編纂と「経営理念の見える化」プロジェクトを全社一丸で推進するなかで、社員共通の価値観が育成され、新しいCIの展開に大きな成果が得られた。さらに、メディアやインターネットを通じてそれらを情報発信したことで大きな反響があり、自社に対する社会の認知度も向上したという。
今後、「経営理念の見える化」プロジェクトを新たなCI構築の中核に位置付けて取り組むIT系ベンチャー企業が増えてきそうである。

|
|

|











|