第13回 最新動向
金融業界では、いま営業活動の取り組みに大きな変化が起きている。それは一言でいえば、営業活動の重点を従来の「商品本位型」から「顧客本位型」へと転換する抜本的な変化である。そして、それを実現する手段として今後とりわけ重要になるのが顧客コミュニケーションの強化である。
金融機関の営業といえば、これまではマス顧客をターゲットに、拡販したい金融商品を重点的に販売する商品本位型(プロダクト・セントリック型)の営業活動が中心であった。マス顧客から商品に興味がありそうな見込み客を抽出し、本社マーケティング部門によるDM送付や、各店舗の営業部隊による訪問営業のローラー作戦、コールセンター部門による電話営業のアウトバウンドコールを展開する。いずれも商品の拡販を目指した商品本位型の営業活動である。
しかし、顧客ニーズが多様化し、多種多様な金融サービスの提供が求められる現在、こうした商品本位型の営業活動は通用しない。読むことに興味がない顧客にとってDMは破棄の対象であり、営業員と話すことに関心のない顧客に対して、訪問営業や電話営業を行うのは避けるべきである。相手に不快感を与えるだけでなく、収益と費用の二重のロスを生じやすいという欠点があるからだ。
そこで、これからは顧客ひとり一人のニーズに対応した顧客本位型(カスタマー・セントリック型)の営業活動が重要になる。それにはまず顧客をよく知ることが大切である。たとえば、営業員との対面による金融商品の説明やアドバイスを求めている顧客に対しては、店舗から営業トークの上手なベテラン営業員が訪問し対応する。また、自分でじっくり検討して金融商品を選択したい顧客に対しては、詳しい商品内容が記載された説明書や資料を送付すると共に、後日コールセンターから電話をかけて顧客の反応を確認し適切な対応を行う。いずれの場合も、ひとり一人の顧客を中心に、どの商品を、どんなチャネルで提供していくかを決める顧客本位型の営業活動である。
こうした顧客本位型の営業活動を行うには、それらをきめ細かくサポートするITを活用したさまざまなアプリケーションツールが必要になる。
顧客本位型の営業活動の展開には、顧客との接点となる顧客チャネルを統合し、顧客ごとに最適な顧客チャネルを選択・組み合わせた顧客本位型の顧客コミュニケーション(カスタマー・セントリック・コミュニケーション)を強化していくことが大切である。金融機関には相変わらず、「大量・定期・一括・画一的」といった商品本位型の顧客コミュニケーションを行っているところが多い。
金融サービスの多様化時代を迎えて、金融機関の営業活動と顧客コミュニケーションは従来の商品本位型から、顧客ひとり一人に対応した顧客本位型に急速に変わっていくことが求められている。

(2008年5月12日掲載)