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スティーブ・ジョブズがアップルを救う為に強く訴えたこと

スティーブ・ジョブズがアップルを救う為に強く訴えたこと
「カーマイン・ガロ著「スティーブ・ジョブズ 
驚異のイノベーション」日経BP社」

スティーブ・ジョブズが1996年アップル社に復帰した時、同社は倒産の危機にあった。売れ残った大量のパソコン(マッキントッシュ)の過剰在庫を抱え、深刻な赤字経営に陥り、当時シリコンバレーではアップル社は倒産するか、どこかに吸収合併されるしかないといわれるほど悲惨な経営状態であった。同社の経営再建のため請われて復帰したジョブズは、真っ先に彼のビジネスの懐刀となるティム・クック(アップル社現CEO)を呼び寄せた。クックは商品開発、デザイン、製造技術にまで幅広い知識と経験を持つ有能な人物だったからだ。ジョブズはまずクックに経営悪化の元凶である過剰在庫の整理を急がせると同時に、「アップルを救うには、世界があっと驚くような、世界を変えるような画期的な新製品を造り、もう一度ユーザーの信頼を勝ち得るしかない」ことを並々ならぬ情熱を傾けて語り、クックを必死に説得した。瀕死の経営状態にあるアップルを救うにはプロダクトイノベーションしかないことをジョブズは強く訴えたのである。

ジョブズが一番大事にしたのは、自分がどんな製品を造りたいのか。その製品をつくることによって、なにができるのか。生活や行動がどう変わるのかを示す「ビジョン」やアイデアを非常に大事にした。成功するには、誰かのビジョンやアイデアを模倣する人間でなく、まだ誰もが考えていない、他とは違ったビジョンやアイデアを思いつき、実行する人間にならねばならいとも彼は語っている。

そして、ビジョンやアイデアを形にするには創造力が必要だ。ビジョン・アイデアと、技術・デザインを結びつけ、形として組み合わせるのは創造力である。その創造力を生み出すツールがITである。ITというと、これまで業務効率化のツールと思われていた。しかし、決してそうではなく、ITはアイデアや想像力を刺激し、生み出す創造力のツールなのだ。