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ITをいかに上手に活用するかが、プロダクトイノベーションの成否を決める

激しいグローバル競争が展開される中で、イノベーションは企業が成長するためでなく、いまや「生き残るための原動力」になっている。日本は人口減少によりこれから大きな成長・拡大が見込めない。そんな中で、多くの企業は成長どころか、いかに生き残るかに必死である。現在どの企業もイノベーションを行なわねば生き残ることさえ難しい。

なぜか。一つは、ITの普及と進歩により、情報のスピードや市場の変化がものすごく速くなっていることだ。もう一つはグローバル化の進展により、国境も業界の垣根も意味をなさなくなり、競争相手は世界中の企業であり、それだけ生き残り競争は厳しくなっていることである。家電業界の生き残り競争を見てもわかるように、たとえ新技術・新製品を開発してもその寿命はますます短くなり、競争優位を長く維持することが難しい。

ITをいかに上手に活用するかが、プロダクトイノベーションの成否を決める

そんな中で、企業はいかに生き残りを図るのか。かつての日本企業が得意とした製品の機能・性能の改善・改良やコストダウンを積み重ねる「プロセスイノベーション」を実行するだけでは、企業はこれから厳しいグローバル競争に勝ち残れない。人々があっと驚くような新製品を開発する「プロダクトイノベーション」が必要だ。その製品が世の中に出たことにより、人々があっと驚き、自分たちの生活(ライフスタイル)や行動を劇的に変えるような、そんなイノベーシヨンが大事になる。プロダクトイノベーションには、「えっ!うっそー」と思わせてしまうサプライズの瞬間が必要である。新製品の機能・性能・低価格をアピールするのでなく、それを使って人々の生活や行動がどう変わるのかが求められる。それが本当の付加価値である。日本企業は要素技術には優れているが、「それでは、それを使って何が変わるのか」、人々のライフスタイルや行動を変える具体的なアプリケーションやサービスが提供されていない。だから、新興企業にすぐに真似されて低価格競争に巻き込まれる。

イノベーションには創造力が必要だ。イノベーションや創造力というと、なにか特別の才能や能力を備えた人にしか不可能のように思うかもしれないが、決してそうではない。ピーター・ドラッカーも「イノベーションは天才のひらめきや天賦の才能でなく、誰もが学び実行することができるものである」(「イノベーションと企業家精神」ダイヤモンド社)と語っている。アップル社創業者のスティーブ・ジョブズは「創造力とは、いろいろなものをつなぐ力だ。一見すると関係のないように見えるさまざまな分野の疑問や課題、アイデアやひらめきを上手につなぎ合わせる力だ」(カーマイン・ガロ著「スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション」日経BP社)と明快に語っている。

さらにジョブズは「ITは創造力を生み出す最適なツールである。我々がiPadやiPhoneのようなクリエイティブな製品を創造できるのは、何を作りたいのかのビジョンやアイデアが明快で、それらを形にする優れた技術、あっと驚く斬新なデザイン、すなわちテクノロジーとリベラルアーツの交差点にいようとしているからであり、それらの分野のいいところをつなぎ、組み合わせようとしているからだ。ITはそれらをつなぐ力を持っており、それを可能にする最適なツールである」(カーマイン・ガロ著「スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション」日経BP社)とも述べている。まさしく、ITをいかに上手に活用するかが、プロダクトイノベーションの成否を決めるといっても過言でない。