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ITと経営の融合でイノベーションを起こす

シュンペーターやドラッカーのこれらの教えをIT時代の現在の企業経営にどのように生かし、実践したらよいか。カギをにぎるのは「ITと経営の融合でイノベーションを起こす」という考え方である。

ビッグデータ

たとえば、現在はIT化の急速な進展、インターネットやスマートフォンなどの爆発的な普及により、膨大な量のビッグデータが企業のビジネス活動において流通し、収集・蓄積され、分析・活用されている。ところが、これらのビッグデータのうち、企業のビジネス活動に実際に利活用されているのは1%以下に過ぎない。そこで、いまこうしたビッグデータを利活用することで、企業にイノベーションを起こし、次のビジネスチャンスにつなげようとする取り組みが始まっている。具体的にどのような取り組みが行われているか、代表的な先進事例を紹介しよう。

ビッグデータの利活用で現在最も進んでいる事例は、マーケティングの強化を図り、新たな顧客を獲得して、市場開拓につながるイノベーションを起こそうというものである。新たな顧客獲得・市場開拓の取り組みは、シュンペーターもドラッカーもイノベーションを起こす実践経営の代表事例に上げている。

インターネットやSNS、フェイスブックやツイッター、POSや電子マネーなどから得られた膨大な購買履歴データやポイントサービスの利用データを収集し、分析・活用することで、マーケティングの強化を図り、ビジネスチャンスを見出し、イノベーションを起こして成長戦略に繋げようとする取り組みが流通小売業で広がっている。

ネットショッピングの事例

たとえば、ネットショッピングを行っているある通販会社では、サイト上に蓄積された膨大な購買履歴データを顧客の属性(性別・年齢・職業など)、購買行動、ライフスタイルごとにキメ細かく分析し、一人一人の個客の嗜好・興味・関心にマッチした商品やサービスを先回りして勧めたり、タイミングよく提案することで、既存客の維持率向上や新規客獲得で成果を上げている。

コンビニ店舗での事例

また、都内のあるコンビニ店舗では店内に設置したビデオの動画データを細かく分析して、来店客のうち商品を買わなかった顧客の行動を分析し、なぜ買わなかったのか。商品の陳列の仕方が悪かったのか、それとも商品棚のレイアウトが良くなかったのか、問題点を見つけ出し、改善策に生かそうとしている。

電力コストの削減に繋げた事例

さらにこんな事例もある。製造業のある中堅企業では、電力料金の値上げに抗して「いつ、どこで、どれだけ」の電力を使用したか一目でわかるように、新たにモニタリングシステムを導入して電力使用量の見える化を図り、電力使用料金の大幅な削減を実現した。各部門・部署ごとの電力使用量を数値データで監視することで、どの部分で、どの時間帯に、どれだけの電力が使われているか、電力使用量の正確な把握に努めた。その結果、どの部署の、どの時間帯にムダな電力使用が多いかも分り、どこを、どう改善すれば、電力コストの削減に繋がるか、数値データに基づく具体的な改善策を提案できるようになったという。

いずれのケースも、これまで十分に活用されていなかったビッグデータを新たな視点や発想から利活用することで、顧客獲得・市場開拓、ムダの発見・コスト削減を実現し、企業にイノベーションを起こし、次の成長戦略に繋げている。

経営者は今こそシュンペーターやドラッカーに学び、そこからヒントを得た様々なアイデアや提案を実行に移し、企業にイノベーションを起こして、不況突破・成長戦略の構築に取り組まねばならない。