10年以上も続く深刻なデフレ不況やかつてない超円高の厳しい経営環境をなかなか突破できず、次なる成長戦略も見出せない多くの企業にとって、いま最も必要とされるのは、従来の考え方や発想を変え、これまでのビジネスモデルを徹底的に見直して、新たな事業やビジネスに果敢に挑戦していく「イノベーション」(事業革新・経営革新)の取り組みである。
従来の常識や価値観に捉われず、新たな視点や発想からイノベーションのチャンスを貪欲に見出して、そこで得られたアイデアや情報を生かして新たなビジネスや事業を創造していく。イノベーションをデフレ不況突破、次の成長戦略の原動力とする実践経営が今ほど求められる時機はない。すべての経営者は、イノベーションを起こす実践経営のリーダーシップを発揮すべきである。
では、現在の厳しい経営環境のなかで具体的にイノベーションをどのように起こし、その成果を企業変革にいかに生かしていったらよいか。経営者にとって、それは切実な悩みであり、企業経営にとって最大の課題である。
経営者のそうした悩みや課題を解決する上で、貴重なヒントになるのが「イノベーションの元祖」ともいうべき経済学者のシュンペーターと経営学者のドラッカーの教えである。2人とも、イノベーションこそが企業が成長し、経済が発展する最大の原動力であると明確に語っている。
ノベーションを起こすには従来の延長線の考え方でなく、新たな発想による「不連続的な変化と革新」が必要である。そのことを、シュンペーターは主著「経済発展の理論」の中で、「馬車をいくら繋いでも鉄道にはならない」という巧みな比喩と表現で分りやすく説明している。企業がイノベーションを起こす要素として、シュンペーターは次の5つの要件を上げている。それらは非常に分りやすい。
(以上、シュンペーター著「経済発展の理論」岩波文庫より)
これら5つの要件をすべて満たさなくても、どれか1つでも実現できたら、企業はそれを突破口にイノーベションを起こし、事業革新・企業変革につなげ、次の成長戦略の道を開くことができる。自社にとって、イノベーションを起こす可能性の高いのはどの分野か。どこに経営資源を集中投入したら良いか。それを的確に見極め、実行するのが経営トップの役割である。経営者としての真価が最も問われるところだ。
企業経営に精通したドラッカーの教えはもっと具体的で、実践的である。彼の主著「現代の経営」と「イノベーションと企業家精神」の中で、彼は「イノベーションと経営」についてこう述べている。
企業が生き残るには自ら変化しなければならない。企業に変化を創り出すイノベーションと成長を生み出すマーケティングこそ、企業本来の最も大切な役割であり、機能であるとドラッカーは指摘している。