経営とITの一体化が急速に進んでいます。そのなかで、ITを使いこなすために求められる知識やスキルに変化が起きています。10年前に求められたのはパソコンを操作するためのスキルでした。ワープロソフトや表計算ソフト、さらにはインターネットを利用したり、電子メールを送ったりというパソコンそのものを利用するためのスキル獲得が重視されました。
これらのスキルは「経営とIT」のうち、ITよりのものと言えるでしょう。それに対して、現在では、もっと経営やビジネスに近いスキルが重視されるようになっています。その背景には、ITがより経営やビジネスに深く関わるようになったことがあります。例えば、内部統制では経営者に真正な財務報告書の作成を求めていますが、それは財務のテーマであるとともにITのテーマでもあります。コンピュータに納められている財務データが改ざんされないようにするには、アクセス管理ツールというITの活用が不可欠。つまり、内部統制を実行するには、経営とITに関する知識が必要不可欠なのです。
そんな状況を受けて、経済産業省が推進してきた情報処理技術者試験が改訂されました。なかでも、注目したいのは最も初級レベルに位置する「ITパスポート試験(2009年4月に創設予定)」です。この試験はIT知識も出題されるものの、「企業と法務」「経営戦略」など、経営やマネジメントに関する知識も出題の対象となっています。例えば、財務諸表の読み方や労働基準法に関する知識など、ITと関わりのない分野からの出題も予想されています。
このITパスポート試験は、ITベンダーとITユーザ企業の社員の双方を対象に設けられたものです。情報処理技術者試験というITのプロ向けの試験の一環でありつつも、一般のビジネスパーソン(=すべての職業人)を強く意識した内容となるはずです。別の言い方をすれば、ITのハードやソフトの知識を問うものというより、会社の業務革新を実行するためにITをどのように活用すれば効果が生まれるのか、というような業務視点に立ったIT活用スキルの有無を問うものになるでしょう。
また、ITのみならず、経営用語やビジネス用語の知識レベルを確認するための目安ともなるでしょう。試験を実施する(独)情報処理推進機構(IPA)によると、新入社員と営業職の社員全員にITパスポート試験を受験させることを決めている企業が既にあるそうです。経営用語といっても、入門的な位置付けなので試験の内容はそれほど専門的なものではありません。職業人として、経営にあるいは業務にITを生かすための知識をどの程度持っているか、確認する機会になると期待されます。皆さんの会社でも挑戦してみてはいかがでしょう。(文・フリーランス ライター 小林 秀雄)
(2008年8月25日掲載)