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第139回 『歯医者』

■ 想像できない

昔はどんな風にやっていたのか。以前の姿を分かっているようで、もはや想像もできないものがある。例えば、家に電話がなく、用があれば会いに行くか手紙を出していた時代。現在、携帯電話や電子メールが普及する便利で豊かな生活に浸っているせいか、その当時の様子や生活を想像するのは容易ではない。また、医学の変化(進歩)も凄まじいものがある。かつて医者が聴診器と包帯と少しの薬を診察鞄に詰めて治療を行っていた時代があったが、特に歯医者(歯科医)の場合、昔はどのように歯を治療していたのだろうか。今回は、そんな歯医者について調べてみた。


■ 歯医者の歴史

歯の病気は恐らく分からないことの多い存在だったのだろう。虫歯の原因が酸であり、歯垢もその原因の一つであることが分かったのは、19世紀末のこと。それまでは、この不思議な歯の痛みに対して、様々な試みが行われてきた。例えば、古代より18世紀までの長い間、虫歯は「歯虫」と呼ばれる小さな虫が歯を食い荒らしている、と考えられていた。また、古代バビロニアでは、歯虫を駆逐するために歯虫祓いの儀式を行い、ヒヨスの実を焼いて治療薬とした、という記録が残されている。このヒヨスの実には緩やかな麻痺作用があると言われる。つまり、鎮痛剤であったわけだ。
14世紀には「歯抜屋」という実に恐ろしげな商売人も存在していた。ヨーロッパ各地の街を渡り歩き、虫歯に苦しむ人がいると、治療はせずに、とにかく痛んでいる歯を抜く。その瞬間はさぞかし痛かっただろうが、抜いてしまえば虫歯の苦しみからは解放される。治療といえばそうなのかも知れないが、ぞっとするような話である。また、イタリアではこのような抜歯の仕事を理髪師が行っていたという。当時は理髪師が医者も兼ねており、身体の一部を切ったり治したりするのは、すべて理髪師の仕事であった。ただ、当時の歯の治療に関しては、硝酸(しょうさん)を塗り、表面を溶かして色を白くし真新しい歯に戻すという、いい加減なものだったらしい。

日本においては、8世紀初期に歯の治療が行われていた記録が残っている。しかし、これも「歯磨き」や「うがい」の奨励等、現在の治療内容とは程遠いものだった。現在のような歯科治療が始まったのは、明治時代になってから。1873年に「医制」が発布され、その2年後の1875年、小幡英之助という人物が、第1回目の医術開業試験に「歯科」として申請・受験し合格した。日本で初めての歯医者と言われている。
(2007年9月25日掲載)

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