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第109回 『万歳』

■ 歓喜の瞬間!

東海林さだおさんのコラムで「人は歓喜の瞬間、天を目指す」ということが書かれていました。試験合格、選挙当選、野球のサヨナラホームラン・・・。たしかに歓喜の瞬間、人は手を激しく上に突き出し、少しでも天に近づこうとするかのような仕草をしている。どんな民族でも歓喜の瞬間、地面に向かって地団太踏むような行動はあまり見たことがなく、多分これは世界共通のことなのだろう。
日本人にとって、歓喜の動作の一つに万歳(バンザイ)がある。世代間における表現方法の差異について最近話題になることも多いが、先日閉幕したサッカーワールドカップの観戦風景などを見ていると、この万歳だけは日本人共通で、世代間においても正しく伝承されているように感じる。また、万歳という言葉はその響きが何とも良い。発音しやすく、「バ」や「ザ」と発声すると力が湧いて来る感じさえする(私だけだろうか?)。
調べてみると、万歳の誕生は本当にこのようなことが真剣に議論された結果なのであった。


■ 万歳の誕生

万歳はもともと漢語である。中国では「万年」「長寿」「長久」といった意味も込められていたことから、皇帝への奉祝の言葉としても使われていたようである。日本においては、8世紀頃の桓武天皇の時代からこの言葉が使われていたという記録が歴史書に残されている。しかし発音は「バンザイ」でなく「バンセイ」あるいは「バンゼー」であった。
この「バンセイ」が現在の「バンザイ」になったのは、明治22年のこと。この年は明治憲法が発布され、明治維新以後、名実ともに新しい国家体制となった年である。そうこの重要な発布の行事において、明治天皇への奉祝の言葉として使われたのが最初である。
どのようにして明治天皇の御前で皆が祝意を表すか。当時、このテーマのために各界の識者が集められ、1ヶ月以上にわたり議論したという。その会議で当時の文部大臣であった森有礼から「奉賀(ホウガー)と唱えたらどうか」といった案が出されたが、発音しにくく、連続でこの言葉を発すると「ア・ホウガー」となってしまうなどの理由で却下されたようである。そして次に出されたのが、歴史の中でも、「祝い」「歓喜」の言葉として登場した「万歳」という言葉だった。ただし読み方は「マンザイ」。これも「ホウガー」同様試してみるが、今ひとつ腹に力が入らない(特に「マ」の部分)。そこで修正案として出されたのが、謡曲・高砂の中で登場する「さて万歳(ばんぜい)・・・」という発音であった。「マン」を「バン」とすれば、力が入るではないか。こんな話の展開から、約120年前、日本の「万歳(バンザイ)」がこの世に登場したのである。
(2006年7月31日掲載)

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