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第107回 『爪楊枝』

■ 見た目ではわからない道具

まな板は、まな板という名前がつけられているため道具として認知されているが、よく見ればただの四角い板である。割り箸も、冷静に見ればただの二本の細い棒である。何万年後かに発掘されれば、そのあまりの道具らしくない姿ゆえ正体を見破るのに大変な想像力を必要とすることだろう。
爪楊枝もそんな道具の一つであろう。見た目はただの細くて短い棒。用途を知らない人が見たら、道具だとは思わないかも知れない。最近では利用者が減少しつつあると思われるが、まだまだ愛好している方も珍しくはない。
歯の間の異物を速やかに取り除きたい!この望みは人類共通、普遍的なものであったようで、爪楊枝の歴史は驚くほど古い。今回はそんな爪楊枝について調べてみた。


■ 爪楊枝のルーツは?

人類で初めて爪楊枝らしきものを使ったのは、なんとネアンデルタール人。10万年前の話である。発掘された歯の化石に、堅い楊枝で歯をこすった縦の筋が見られるという。
現在日本で使われている爪楊枝の原型は、実はインドから伝えられたもの。そして発明した人物の名前は、なんとあのお釈迦様である。今から2500年前、爪楊枝はインドの地でお釈迦様によって考え出され、弟子たちに伝えられ広がったものであった。この爪楊枝は、インド原産、万病に効くといわれるニームという木の枝を使い、その枝の一端を噛んで毛筆の毛先状にしたもので、歯木(しぼく)と呼ばれている。
歯木の習慣はインドから中国・朝群半島を経て広がり、日本には奈良時代に仏教と共に伝わった。そして最初は僧侶に取り入れられ、平安時代には一部上流社会、ついで江戸時代には庶民の間でも使われるようになった。当時の爪楊枝は、毛筆の毛先のような歯木の形から少し進化を遂げ、一方は毛先状、もう一方は鋭い先端の棒状をした房楊枝と呼ばれるものであった。つまり一方に歯ブラシ、一方に爪楊枝を配した、まるで王様のアイデアのようなもので、これは爪楊枝のみならず、歯ブラシのルーツともいえるものである。
ちなみに、現在多く使われている爪楊枝の原材料は白樺で、「割り箸」にも使われている柔らかい木材である。
(2006年7月10日掲載)

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