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第103回 『新婚旅行』

■ なぜ旅行に?

人生の分岐点ともいえる結婚。そして新婚旅行は、夫婦として新しい人生へと旅立つイベントの一つである。少し前までは、入籍だけで披露宴や新婚旅行などは行わない「ジミ婚」なんて言葉が流行ったものだが、最近では国内や海外の高級リゾートのほかに、大陸横断鉄道による豪華列車の旅や豪華客船での世界一周旅行をする方もいるようである。
さて、皆さんはそんな新婚旅行の起源や意味をご存知だろうか?調べてみると、意外な事実が判明した。


■ 新婚旅行のはじまり

新婚旅行、英語で言うところのハネムーンの起源は残念ながらはっきりとはしていない。しかし、ハネムーンの語源は判明している。もうちょっと英語っぽく発音するとハニームーン。ハニーは蜂蜜、ムーンは月のことである。ちなみに「蜜月」という言葉があるが、蜜月の語源はハネムーンである。
実は古代から中世にかけてのヨーロッパでは、蜂蜜は精力増強剤と考えられていた。特に新婚家庭では、蜂蜜を飲みながら、ひと月もの間、子孫繁栄のために家にこもるのが慣習だったらしい。今は家にこもるかわりに旅行となり、言葉だけが残っているということのようだ。
また、日本で初めて新婚旅行を行った人物は坂本龍馬と言われている。有名な寺田屋事件で手傷を負った龍馬は、薩摩藩に保護され、その後、藩の配慮で危険の少ない鹿児島に移動する。そこで傷の治療をかね、事件後に夫婦になることを誓ったお龍さんを伴って、領内の様々なところに出かけたのが日本で最初の新婚旅行とされている。幕末、維新直前のことである。

さて時代は変わり、明治の世。それまで地域ごとのしきたりで執り行われていた結婚の儀式が、現在のような結婚式へと急速に変化を遂げることとなる。理由は当時、東京にいたエリートの人々たちの存在。彼らのほとんどは維新を実現させた薩長土の人々。つまり故郷を離れた人達だった。
故郷で婚礼を行わない彼らは、地域ごとのやり方ではなく、ホテルで西洋の方法を見習ったパーティと披露宴を行うようになった。これがホテルで行われている現在の結婚式のもととなったのである。そして、新婚旅行もこの結婚式とともに徐々に行われるようになっていったのである。
しかし、そんな憧れの結婚式と新婚旅行の習慣も、当時はあくまでエリートだけのお話であり、一般庶民が結婚式場で式を挙げ、新婚旅行に出かけるようになるのは、それからさらに100年後のこと。昭和の高度成長期、昭和40年頃からのことである。

ちなみに、その頃の、新婚旅行に関する面白い記録が残っている。
『昭和42年3月28日に1,400組の新婚さんが定期観光バスを占拠!』と言うものである。
昭和42年と言えば、いま定年を迎えようとしている団塊の世代が、ちょうど結婚適齢期を迎えていた時代である。また、3月28日は大安と日曜日が重なったまさに結婚日和であった。そのため伊豆の観光バスが大量の新婚さんによって占拠されてしまったというのである。時代を感じる話である。
(2006年5月15日掲載)

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