





第93回 『黒板』
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■ フランス生まれ
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学校、それも教室内の風景を思い出すときに、真っ先に思い浮かべるのは黒板だろう。小学校にはじめて登校した日、紙で作ったお花に囲まれ、色とりどりのチョークで書かれていたお祝いの言葉。毎朝書き換えた日直の名前。黒板にまつわるさまざまな記憶は、子供時代の楽しい思い出と結びついて、なんだか温かい気持ちにさせてくれる。
そんな黒板がはじめてこの世に登場したのは、18世紀のフランス。時まさにフランス革命の真っ只中であり、革命に必要な新しい思想を市民に伝える手段が求められていた時代である。当時、印刷技術はすでに存在していたが、印刷機や紙は非常に高価で、庶民が手軽に利用できるものではなく、一度書いても消せばまた使える黒板は経済的で次第に街角へ置かれるようになっていった。
この「多くの人たちに一度に見せることができ、何度でも書き換えられる」という特長は、その後、教育の現場で注目され、フランスの学校で使われるようになった。その後、1810年代にはアメリカの陸軍士官学校でも利用され、軍事工学を合理的かつ正確に教えるために使われたという。
日本へは、黒板の誕生から約100年の月日を経た明治5年頃(1872年)、アメリカから伝えられた。紹介したのは、アメリカ人のスコットという人物であり、当時、教育制度を充実させるために日本に招いた人物の一人で、アメリカ式の教育システムを日本に伝授するために彼が持ち込んだ道具の中に黒板があったのだ。「黒板」という名前は、その時の英語名「ブラックボード」がそのまま訳されたものである。
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■ 「あの音」の理由は・・・
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スコット氏によって持ち込まれた黒板は、石粉とススを漆で練って板に塗りつけ、それをヤスリで削って平面に仕上げるという、まるで工芸品のような手間暇をかけて作られたもので、現在の黒板とはだいぶ違ったものだったようだ。終戦後の昭和30年代には黒板の表面専用の塗料が作られるようになったが、素材のベニヤ板に塗料を塗りつけたこの黒板は、3〜5年くらいで傷んで使えなくなってしまったという。昭和40年代に入ると、スチールに専用塗料を焼き付けた黒板が登場し、現在に至っている。私たちが目にしていた黒板は、実は木製ではなくスチール製だったのだ。言われてみれば、地図や模造紙などを磁石で黒板に留めていたような記憶がある。そう、黒板を爪の先で強くこすったときに出るあの「キィー」という身の毛もよだつような音も、黒板がスチール製であるが故のことだったのだ・・・。
ところで、「黒板」と呼ばれてはいるものの、黒板の表面の色は、黒ではなく緑色である。昔は本当に黒だったようだが、目に対する刺激などの理由から、専用塗料の開発時期に現在の色に変えられた。また、この時、光の反射を防ぐために、黒板に少しだけ湾曲するような加工が加えられており、実は黒板は平面ではなく、ゆるやかにカーブしている。機会があったら、一度じっくり観察してみたいものである。
最後に余談ではあるが、学習塾では黒板ではなくホワイトボードを使うところが多いという。これは、黒板といえば学校、という強烈なイメージが刷り込まれている生徒に対し、「ここは学校でない!」と認識させるためにあえてそうしているのだとか。ご存知だっただろうか?
(2005年12月27日掲載)
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