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開発者に聞く



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このコーナーでは、日立製作所の研究所等で研究・開発を行っている技術テーマを中心としたコラムをお届けします。 研究員にインタビューを行い、技術テーマ解説・開発過程におけるエピソードなどを交えてわかり易くご案内いたします。
小型モジュールを連結するだけで組み込みコントローラを柔軟に構築できる
ユビキタスコントローラ「UbiCube」
■ 制御系と情報系の機能を個別にモジュール化

− 組み込みコントローラとはもともと、どのような役割を持つ製品なのでしょう。
山田: ビルや工場の各種設備、産業用機器などに組み込んで、さまざまなデータの管理や遠隔監視、制御などを実現するコンピュータです。24時間365日の連続稼働や、厳しい環境条件で設置されるケースが多いため、一般的なPCより高い信頼性が求められます。また、お客さま個別の要求機能を組み込むのでカスタマイズして提供されるのが一般的です。
− その組み込みコントローラに対するニーズが、近年大きく変化してきたわけですね。
苗村: いちばんの変化は、制御システムと情報システムとをシームレスに連携したいという要望が増えてきたことです。既存のコントローラは日立製なら日立製、他社製なら他社製どうしの“言語”でしか情報をやりとりできず、標準化が進む情報システムやRFIDなどのユビキタスデバイスと連携させるには、非常に高いハードルがありました。またCPUやメモリーにも限界があり、セキュリティ機能や新たなインタフェースを付加するにもゼロから設計をやり直す必要があったのです。そこで、オープンなネットワークとプラットフォームを採用することで、信頼性を維持しながら、柔軟な連携性と拡張性、セキュリティ性も兼ね備えた組み込みコントローラを作ろうということで、2004年から日立研究所と当社とのコラボレーションがスタートしました。
山田: そして約1年後に完成したのが「UbiCube」と名付けた試作機です。制御モジュールのほか、LAN、コンパクトフラッシュ、ビデオ出力、USBといったさまざまな機能を個別に分割した小型モジュールを必要に応じて連結するだけで、お客さまニーズに適した組み込みコントローラを容易に構築できます。モジュール1個1個に省電力のSH-4マイコンと、必要なソフトが搭載されており、単独でも協調しながらでも稼働できます。セキュリティ面にも配慮し、IPsecを用いた暗号化通信に対応しています。
− 合体ロボならぬ、合体コントローラですね。これは制御系機能と情報系機能を並列に組み合わせることができるのですか。

山田: はい。既存のコントローラはあくまでも制御機能が中心だったため、通信や位置情報などの新機能を追加する際には、制御機能を邪魔しないレベルで入れ込むか、基板設計を最初からやり直さなければ対応できませんでした。しかしUbiCubeなら制御系も情報系も、みな対等な立場で相互接続し、すぐれたパフォーマンスを発揮できる。欲しい機能だけを取捨選択して柔軟かつスピーディに新しいコントローラを作ることが可能なのです。つまり小さな1つの箱の中で、PCのように機能を追加・変更できること、制御処理と情報処理を両立できることがUbiCubeの重要なコンセプトの1つだったのです。
図1 コンポーネント指向技術
図1 コンポーネント指向技術
※クリックして拡大図をご覧下さい

■ 業界標準技術の採用で開発やカスタマイズも簡単

丸山: 情報系モジュールはOSにLinuxを採用し、各モジュールをつなぐインタフェースはPCIバス、モジュール間通信はTCP/IPで行います。
− まさに業界標準のPCと同じように動き、相互の機能連携が図れるわけですね。
丸山: はい。豊富なLinux資産を活かしたソフトウェア開発が可能なため、さまざまな要求に対して開発工数を大幅に低減できるのもメリットです。制御系については現在、Ethernetを実装したモジュールを試作していますが、この制御系モジュールではリアルタイムOS、隣に連結した情報系モジュールではLinuxがそれぞれ動いており、TCP/IPで通信しながら協調できるのもUbiCubeならではの特長です。
図2 ユビキタスコントローラ UbiCube
図2 ユビキタスコントローラ UbiCube
− このUbiCubeによって、お客さまはどのようなメリットが期待できますか。
山田: まず柔軟な開発が可能になります。例えば制御モジュールとコンパクトフラッシュモジュールを組み合わせ、自家発電用装置に組み込むことで、発電量などのデータをネットワーク上で管理することができます。ネットワーク接続機能と暗号化処理機能を備えたセキュア通信モジュールを制御モジュールと組み合わせ、インターネットを介して情報システムと連携すれば、トレーサビリティシステムを容易に構築できるという具合です。
 広範囲な業務に対応できるモジュールはすでにそろっていますし、もしお客さまが個別に必要な追加機能があっても差分のみを開発すればいいわけですから、迅速かつ低コストに対応できるのも、お客さまに喜んでいただけるポイントだと思います。
苗村: 遠隔からOSレベルの更新ができるのも大きな特長です。同一ネットワーク上や工場内の閉じたネットワークだけでなく、日本全国、あるいは海外に散らばっているコントローラでも、ネットワーク経由で安全に書き換えることができるようになります。これは今までにない付加価値になるのではないでしょうか。
図3 適用イメージ
図3 適用イメージ
− サイズ的にもかなり小さいですね。

苗村: 手のひらサイズでデザイン性も高いと、お客さまに喜ばれています。現在、機能評価用に提供しているモデルは、UbiCubeというブランドを特に意識して作ったもので、“きれいにまとめましたね”といううれしいご評価をいただいています。従来なら新サービスの実証実験などでノートPCと通信カードを組み合わせて全国展開しなければならなかったコントローラでも、UbiCubeに置き換えれば省スペースで設置場所を選びませんし、連続稼働させる際の信頼性も高くなります。
写真 コンパクトな手のひらサイズのUbiCube
写真 コンパクトな手のひらサイズのUbiCube

■ UbiCubeで工場全体の仮想化も可能に

− 今後の展開、そして夢は。
山田: まずは制御系と情報系、それぞれの機能を強化し、シームレスな連携性を一段と高めていくことが課題です。そして将来的にはUbiCubeの普及によって、すべての産業機器が有線/無線のネットワークでつながり、標準言語で会話し合える世界を実現していきたいと思います。
丸山: UbiCubeが広まることによって、例えば工場全体の機器を1つのコンピュータのように仮想化することも可能となります。そうすれば各機器に分散していた制御を1つのロジックでコントロールできるようになりますし、物理的なI/Oも必要に応じて標準的なインタフェースを付け足せば容易に拡張することが可能となります。そういった、制御システムの柔軟性と環境変化への即応をサポートできる基盤となるよう、これからもUbiCubeをさらに進化させていきます。
苗村: 日立産機システムが産業機器で培った高い信頼性をUbiCubeと組み合わせながら、制御の世界を情報系につなぐための重要なプラットフォームとして、お客さまに喜ばれる製品にしていきたいと考えています。
− 期待しています。本日はどうもありがとうございました。
※UbiCubeは、株式会社日立製作所の登録商標です。
※ユビキタスコントローラは、株式会社日立産機システムの登録商標です。
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