その打開のため、5月に新事業開発本部を中心とした事業化推進チームが発足しました。われわれが扱うのは、DMFC(直接メタノール形燃料電池)という最も小型のタイプ。出力は数Wからせいぜい100Wで、ノート型PCや携帯情報機器への搭載が期待されるものです。発電方式としては、自動車エンジンなどに使われるPEFC(固体高分子形燃料電池)の一種。PEFCは一般に水素を燃料とする。しかし水素は自然界には存在しないので、別のエネルギーからつくり出す装置が必要となる。DMFCはメタノールを燃料とし、それを直接酸化させて電気を取り出すので、小型化が容易なんです。われわれはこれで「電源のユビキタス」を実現したいのです。ユビキタスとは、いつでも、どこでも、誰でもという意味合いをもち、DMFCはユビキタスを実現できる最も近い手段だと考えています。
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日立がDMFCの開発を始めたのは2001年。これまで試作機としてPDA(携帯情報端末)、携帯電話、外付け充電器などを開発してきました。2005年の愛・地球博に出した「Nature Viewer」は、世界で初めて一般ユーザーにお披露目した燃料電池搭載の情報端末です。
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実は、日立は1960年代から燃料電池を開発していました。当時、アルカリ形やリン酸形、溶融炭酸塩形などさまざまな種類を検討しました。燃料電池開発には、あらゆる分野の総合技術が求められる。日立の強みはグループとしてその力をもっていること。基礎研究や設計は日立研究所、電解質膜は日立化成工業、触媒は日立マクセル、集電材は日立電線といった具合です。さらに、試作製造は日立神奈川マニュファクチャリングソリューション、市場調査は日立ハイテクノロジーズが協力しています。特に、DMFCは発電部材のMEA(膜電極接合体)の性能がカギとなる。日立はその材料が強いんです。
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今後クリアすべき課題としては、低温での発電が難しいことや、クロスオーバー現象といってメタノールが電解質膜を透過して発電効率が落ちてしまうこと、また貴金属材料を用いるのでコストが高いことなどがある。こうした技術的課題を解決するとともに、一方で事業の成立性を探っていくのも重要です。そもそも、どんな製品市場がどのくらいのボリュームで成立しうるのか。それを見極めるため、市場調査やモニター調査を行い、実際にユーザーにも使ってもらって判断材料にしていきます。
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DMFCは、最終的にはノート型PCや携帯電話に組み込むまで小型化するのが目標ですけれども、もっと別の用途も考えられそうです。今試作しているのは、手軽に持ち運びできるサイズで、オフィスの非常用電源や、ポータブル発電器としても使える中型の電源です。AC電源のない場所でPCをつないだり、キャンプ場でランタンやCDラジカセの電源にしたり。燃料電池なら騒音も排気ガスもない。考えてみれば、身の回りにはAC電源につながないと動かないものがたくさんありますよね。もし、こんな用途に使いたい、こんな場所で使えたらという要望があればぜひ、お聞かせいただきたい。そんなニーズやアイデアのなかから燃料電池の意外な可能性が開けてくるんじゃないかと予感しています。
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