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このコーナーでは、日立製作所の研究所等で研究・開発を行っている技術テーマを中心としたコラムをお届けします。 研究員にインタビューを行い、技術テーマ解説・開発過程におけるエピソードなどを交えてわかり易くご案内いたします。
2.4Gbpsの次世代光ネットワークでハイビジョン映像を100チャンネル同時配信する技術
■ トリプルプレイを実現するGPON

− NGNを実現するための基盤として、GPONという光ネットワーク技術が注目されているそうですね。今回のHD映像100チャンネル同時配信もGPONがベースとされていますが、まずはGPONとはどのようなネットワークなのかから教えていただけますか。
坂本: 数年前までブロードバンド回線として主流だったADSLに代わり、現在大幅に加入者数を伸ばしているのが光ファイバー網を使用したFTTH(Fiber To The Home)です。このFTTHでは、経路の途中に光スプリッタと呼ばれる分岐装置を入れることで、1本の光ファイバーを複数ユーザーで共有しながら各家庭に引き込むことができるPON※3というアクセスシステムが主流となっています。PONは、OLT※4という局内装置から、ONU※5という家庭内装置の間の光ファイバーを、給電の必要のない光スプリッタで「1対多」に光分岐することにより、低コストで高速なブロードバンドサービスの提供を可能としています。
※3 PON:Passive Optical Network
※4 OLT:Optical Line Terminal
※5 ONU:Optical Network Unit

池田: NGN時代のネットワークビジネスでは、インターネット接続、IP電話、映像配信の3つのサービスを1本の回線でまとめて提供する「トリプルプレイ」の実現が求められてきます。そこでは非常に高速で広い帯域幅が必要とされるので、GPONが有力な規格として注目されています。日立はGPONの国際標準化において大きな貢献を果たすとともに、すでに商用サービスが開始された北米向けに、世界に先駆けた商用製品となるGPON対応のOLT「AMN1220」を納品しています。今回開発した技術は、こうしたGPONのシステム上で大容量の映像データをケーブルテレビ並みの100チャンネル、それもHDという高精細画像で各家庭まで伝送できるアーキテクチャなのです(図1)。
図1 放送通信融合・連携プラットフォーム
図1 放送通信融合・連携プラットフォーム
− これまでのIPネットワークでは、高精細なHD映像を送るのは難しかったわけですね。
池田: データ通信とIP電話に加え、HD映像も流そうとすると、従来型ネットワークでは各家庭に3チャンネルか4チャンネルほどが精一杯でした。しかしNGNのサービスでは、スポーツ中継などのリアルタイム映像や、ケーブルテレビに代表される多チャンネルの映像コンテンツをふだんから楽しんでいるお客さまにも満足していただけるよう、高品質なHD映像を、複数の家庭へ多チャンネルで同時配信するための仕組みが必要です。さらにテレビと同様、チャンネルを切り替える際にもストレスなく反応できる高速チャンネル切り替え技術も求められていました(図2)。
図2 HD映像100チャンネルの同時配信サービス
図2 HD映像100チャンネルの同時配信サービス

■ 光のマルチキャストとIPのマルチキャストを連携

− それを今回、どのような方法で実現したのでしょう。
池田: GPONが持つ毎秒2.4ギガビットという高速な伝送能力を活かしながら、光信号を分岐させる際、光でコピーするマルチキャスト機能を使うことで実現しました。厳密に言えば、光のマルチキャストとIPのマルチキャストを連携させた高度な技術を適用していますが、話が非常に複雑になるので今回はスルーさせてください(笑)。これにより、HD映像1チャンネル分が10メガビットとして、その100チャンネル分の1ギガの映像配信を行いながら、残りの部分で高速なインターネット接続やIP電話を同時に提供することが可能となります。これらの技術はすでに敷設されている光ファイバーをそのまま利用できるため、放送局側と家庭内に、新技術に対応した装置を設置するだけで使い始めることができます。新たなインフラを引く必要はありません。
坂本: 要するに、GPONが本来持っている特長をフルに活かした結果、この技術が誕生したのです。それほどGPONは大きなポテンシャルを備えています。また、従来のネットワーク映像配信では、チャンネルの切り替えを行う際、宅内端末からプロバイダネットワーク内のマルチキャストルータへ、いちいち切り替え情報を送信する必要があったため、思うように見たい番組を切り替えられないという課題がありました。しかし今回の方式では、ユーザーが視聴する、しないに関わらず、あらかじめ宅内装置まで多チャンネルの映像データを配信しておくので、テレビと同様にミリ秒単位の高速なチャンネル選択が実現します。
− ユーザーに“切り替えが遅い!”といった不満やストレスを与えない操作性、これはサービスの品質向上や普及拡大にもつながりますね。
坂本: IPネットワーク経由の放送でも、見たいシーンを見逃さない、気になる番組をザッピング感覚で見つけたいといったように、ケーブルテレビや地上波テレビと同じ感覚で楽しんでもらうには欠かせないアーキテクチャだと思います。

■ さらに付加価値の高い放送通信融合・連携システムをめざす

− 今後の展開は。
池田: 今回はハイビジョン換算で100チャンネルとしていますが、スタンダードな映像レベルでいえば400チャンネル程度のものを同時配信できるインフラになっています。その意味ではもう十分、ケーブルテレビに対抗できる映像量を送れるわけですね。あとは北米市場での本格的な事業化に向けた取り組みと、技術的な改善課題の抽出、フィードバックを通して、日本市場や他の国の市場にも広めていければうれしいですね。
 そして将来的にはIPネットワークならではのメリットを活かしたPCや携帯電話との連携、ロケーションフリーの楽しみ方、あるいはGPONの双方向性を活かしたサービスアプリケーション開発といった新たな付加価値も追求していければと考えています。
坂本: NGNが本格化するにつれ、より超高速・大容量なネットワークの実現が求められてきます。例えば各家庭まで10Gbps、HD映像なら900〜1000チャンネルが同時配信できる時代など、決して遠い未来のことではありません。日立の研究所にはこうした次世代ネットワークを支える光技術や、LSIなどのコンピュータ基盤技術の専門家や、放送通信融合時代を支えるアプリケーション、たとえば音声合成・認識技術や、特定画像に関連する映像シーンを多数の映像コンテンツから瞬時に取り出す画像検索技術などの専門家がいます。さらに映像配信用のサーバやストレージ、コンテンツを活用する情報家電までをトータルに提供できる電機メーカーとしての総合力があります。こうした強みを活かして、より高速で信頼性と付加価値の高い放送通信融合・連携システムの実現に取り組んでいきたいと思います。
− 期待しています。今日はどうもありがとうございました。
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