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このコーナーでは、日立製作所の研究所等で研究・開発を行っている技術テーマを中心としたコラムをお届けします。 研究員にインタビューを行い、技術テーマ解説・開発過程におけるエピソードなどを交えてわかり易くご案内いたします。
国ごとに異なるリサイクル方法を考慮した製品設計を支援する
「グローバル対応環境配慮設計支援システム」
■ 製品競争力にもつながるリサイクル性設計

− 今回の研究の出発点となったリサイクル性設計の現状から、まず説明していただけますか。
弘重: いま日本では2001年4月に施行された「家電リサイクル法」などでご存じのように、4種類の家電製品、あるいはパソコンなどを廃棄するときに、消費者がお金を払って処理することが一般的になっています。これと同じく欧州(EU)でも2005年8月から、日本の家電リサイクル法の対象製品を拡大したような「WEEE※指令」が施行されました。家電リサイクル法、WEEE指令ともに要求内容はほぼ同じで、「製造者は使用済みとなった製品を回収し、リサイクルするシステムをつくりなさい、またリサイクルのコストは負担しなさい」ということなんです。
 さらに、こうしたコストを業界全体で均等に負担する「全体責任」という考え方から、今後はIPR (Individual Product/Producer Responsibility)、つまり「個別製品/生産者責任」への流れが加速していくと考えられています。個別の製品に対して、その生産者がリサイクルコストを負担するということです。つまり、リサイクルに1,000円かかる製品を1,000台作ったら、1000×1000=100万円を負担しなければならない。でもリサイクル費用が500円で済む製品なら500×1000=50万円でいいということになります。要するに、これから世界的にIPRの概念が使用済み製品のリサイクルの分野に取り入れられていくと、リサイクルのしやすさを追求した設計が、実質的に製品のコスト競争力にも跳ね返ってくるということです。
※ WEEE (Waste Electrical and Electronic Equipment)指令 : 廃電気電子機器指令
− そこで、リサイクル性設計を支援する仕組みが今まで以上に重要になってきているわけですね。
弘重: IPRの概念を法律にきちんと落とし込んでいる国は、現在EUの中ではドイツだけですが、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、イギリス、北欧などでも推進の動きが活発化しています。IPR的な考え方は日本では早くからありましたが、今後はさらに“苦労した者が報われる仕組み”をしっかり作っていこうと経済産業省の「製品3Rシステム高度化ワーキンググループ」などでも話し合われていますので、リサイクル性設計は間違いなく、これからの企業競争力に大きく関わってくる課題になると思います。
− その動きに対応するのが、「グローバル対応環境配慮設計支援システム」なのですね。
弘重: はい。実はこのシステム、われわれ生産技術研究所などが1990年代に、日本国内での製品リサイクルや環境負荷低減に対する規制に対応するため開発した「リサイクル性評価法(Recyclability Evaluation Method : REM)」や「ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment: LCA)ツール」などがベースとなっています。リサイクル性評価法は、当時の日本でのリサイクル法などに対応するリサイクルコストやリサイクル率を求める手法で、ライフサイクルアセスメントツールは、製品の製造、輸送、使用、回収といったライフサイクル全体にわたる環境負荷を定量化するツールです。
 ただしこれらは日本のリサイクル方式を前提に作ったものなので、グローバルにはそのまま適用できないことがわかってきました。それほど、日本と欧州、あるいは中国などのリサイクルは、方法も違えばコストも違う、それにともない発生する環境負荷も、みんな異なるわけなんですね。そこでまずはWEEE指令などで環境関連のトレンドの発信源になりつつある欧州も含めた形で、グローバルに適用できる仕組みを確立しようと、その分野で非常に実績の高いドイツのフラウンホーファーIZM研究所との共同研究で新技術の開発に取り組むことになりました(図1)。
図1 グローバル対応環境適合設計支援
図1 グローバル対応環境適合設計支援
※クリックして拡大図をご覧下さい

■ 「最終処分量の最小化」か、「解体工数の最小化」か

− 日本と欧州とでは、リサイクルの手法がかなり違っていたのですか。
弘重: 私自身、ドイツに1年以上滞在しましたし、前後の準備期間も含めると約2年ほど日本と行き来しながら研究を行いましたが、とにかく驚かされることが多かったですね。ドイツは容器包装類などの家庭ごみのリサイクルについては、かなり先進的な取り組みをしていますが、電気製品のリサイクルについては、日本の方がはるかに進んでいると思いました。例えば日本なら、まずはきちんと部品ごと、材質ごとにより分けて、不純物がなるべく混入しないよう処理していくわけですが、欧州ではいきなり破砕します。そこから機械的な選別や精錬により、鉄、銅、アルミなどを取っていく。このためプラスチックは焼却でエネルギーを回収する「熱回収」が多いのですが、日本ではプラスチックをきちんと選別した再利用がすでに行われていますので、この違いはかなり大きいですね。言い換えれば、日本は「最終処分量の最小化」をめざす手法であるのに対し、欧州では「解体工数の最小化」が基本となっています。最初の頃は、私が日本のリサイクル方法を説明しても、「どうして日本のように人件費の高い国が、そんなに人手をかけた解体処理を行っているんだ」と、信じてもらえなかったほどです(笑)。
− そういった国別のリサイクル手法の違いを反映させたのが「グローバル対応環境配慮設計支援システム」だということですが、概要を簡単に説明していただけますか。
弘重: まだプロトタイプ的な段階ですが、このシステムでは製品構成や部品の材質、含有物質などの設計情報を国や地域ごとの処理方法の情報データベースと照合して、使用済み製品が解体、破砕などを経て資源回収や処分される工程を自動的に推定することができます。例えばドイツでビデオカメラをリサイクルする際には、解体するのはバッテリーだけで、あとはすべて破砕・選別し、鉄は精錬で回収、プラスチックは熱エネルギーで回収する。一方、日本なら同じ製品を、バッテリー、基板、ケーブル、プラスチックに解体し、それぞれ別処理に回しながら、他の部分は破砕・選別してさらに細かく回収していくというように、複数のリサイクル方法がアウトプットされるわけです。同時に、解体・処理費や処分費、リサイクル時のエネルギー消費、リサイクル率なども細かく算出できます。基本はかつて開発した「リサイクル性評価法」がベースですが、フラウンホーファーIZM研究所の協力による情報データベースの拡充と、国別の出荷数によって処理方法が変わることを勘案した「出荷戦略」なども加えてあるのが特長です(図2)。
図2 システムの適用結果イメージ
図2 システムの適用結果イメージ
− 苦労したのは、どのようなところでしたか。
弘重: 日本と欧州の文化の違いでしょうか。例えば日本では細かい部分まで決めてから法律を実施しますが、欧州では法律を実施しながら育てていくというか、詳細を考えていく傾向がある。そのため各業者が独自に判断する部分も多く残されています。そういった文化の違いを考慮した上で、リサイクル方法の差異をどのようにシステム化するかに、かなり大きな工数を割きました。

■ 環境負荷の少ない製品をグローバルな市場へ

− このシステムを使うと、どんな効果が期待できるのでしょうか。
弘重: リサイクルコストや環境負荷の両面から、解体のしやすさ、製品の処分のしやすさなどの設計改良指針が提供されるため、環境負荷の少ない製品開発を短時間に推進することができます。例えばリサイクル現場で、どの部品やユニットが解体の対象になるのか、またそれぞれの部位がどのような工程を経て処理されるのかなどを設計者が知っていれば、材料選定や設計に非常に有効なデータとなります。具体的には、鉄は磁石にくっつくので簡単に分けることができますが、精錬される際、鉄と一緒に銅やアルミが入るとすべて回収できなくなります。ならば、鉄の部品に銅やアルミが一緒にくっついた形のユニットはリサイクル性が良くないということになる。付加価値の高い銅やアルミをいかに鉄と離れやすく設計するかに、情報を役立てることができるわけです。
− なるほど、環境負荷の少ない製品をグローバルな市場に開発、出荷する際には非常に有効なシステムになりそうですね。今後どのような展開を予定されていますか。
弘重: まずは日立グループ内で試験的な適用を進めながら、情報データベースを日本や欧州以外の地域にも拡張させていきたいですね。その後、グローバルなビジネス展開を支援するシステムとして、お客さまの既存設計システムとシームレスに連携できるソリューションへと着実に進化させていきたいと考えています。
− 期待しています。今日はどうもありがとうございました。
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