− まず、「電子透かし」とはどのような技術なのか、簡単に教えていただけますか。
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山田: 紙幣の偽造を防ぐための「透かし」はご存じですよね。電子透かしはその考え方をデジタルコンテンツに適用させたものです。具体的にはコンテンツの中に識別用の情報、例えば著作権者のIDなどを電子的に埋め込むわけですが、微細な変更を加えるだけなので、静止画や動画の場合もオリジナルと比べて見た目の違いはありません。しかし何か問題が発生した際に、そのデータを専用のソフトウェアを使って見ることにより、初めて電子透かしの存在が確認できるようになっています。
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越前: 例えばAという権利者がBさんに販売したという情報を埋め込んだ映像が、いつの間にか勝手にWebサイトにアップされていたとします。その際、たとえ映像が一部切り出され、縮小されたものでも、電子透かしは画像処理への耐性が強いため、埋め込んだ情報をきちんと検出することが可能です。そこで「これはAのコンテンツをBさんが不正コピーし、流出させたものだ」と判断できます。これにより、著作権侵害を追及できますし、不正コピーは簡単にさせないよ、という心理的な抑止効果にもなるわけです。
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− なるほど、そういった技術が広く普及すれば、不正コピーが減少し、著作権者に安心してコンテンツのデジタル化を促進してもらうことができますね。
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越前: はい。特に最近は高性能パソコンとブロードバンドの普及により、コンサートやスポーツのライブ映像、遠隔教育のコンテンツなどをネットワークで配信する市場が急速に拡大しています。そこでは著作権や肖像権の保護が急務の課題となっているほか、防犯カメラなどの監視映像の利用も拡大しており、その映像の真正性を保証することも強く求められています。
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山田: 私たちはこうしたネットワーク映像配信の市場ニーズを先取りする形で、2004年にパソコン上のソフトウェア処理により、映像に電子透かしをリアルタイムに埋め込む技術を開発しました。従来なら非常に高価なハードウェア装置を使わなければ行えなかった処理を、普及型のパソコンと市販のキャプチャーボード、ソフトウェアのみで実現したのは世界初でした。しかし当時の技術では、電子透かしを埋め込んだ映像を配信前に一度HDDに保存する必要があったため、ライブ配信への適用は困難だったのです。またエンコード方式がMPEG-4に限定され、映像サイズもQVGA(320×240pixel)と小さかったことなどから、より現在の市場ニーズに合わせた機能強化を図ろうと考えました。
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− では新しく開発された技術の内容を説明してください。
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越前: 大きく2つの特長があります。1つは電子透かしを埋め込んだ映像をリアルタイムに出力できるようにしたことです。これは、従来の埋め込み処理プロセスを根本的に見直し、1秒30コマすべての映像フレームに共通な電子透かしの埋め込みパターンを生成する「前処理」と、フレームごとの映像内容によって処理の強度を調整する「後処理」に分離し、演算処理を大幅に低減させたことが寄与しています。従来、これらの処理はフレームごとに毎回計算していたため、CPUへの負荷が非常に大きかったのですが、今回はスタートボタンを押した際に前処理をすべてやってしまうこと、また従来一体化していたMPEG-4による圧縮処理も分離したことで、埋め込み可能な映像サイズを従来の4倍となるVGA(640×480pixel)に拡大し、なおかつライブ配信にも対応できるリアルタイム出力を実現できたのです(図1)。
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図1 動画電子透かしリアルタイム埋め込み技術を利用したネットワーク映像配信サービスイメージ
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− パソコンのリソース活用を大幅に効率化したということですね。
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山田: ええ。一般的なパソコンでこうした負荷の重い処理を行うには、CPUだけでなくメモリーやデータ転送を行うバスなど、さまざまな部分で発生するボトルネックを1つ1つ解消し、バランスよくチューニングしていく作業が必要でした。今回はそういった地道な作業の積み重ねに、かなり多くの時間を割きました。
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越前: もう1つの大きな特長は、埋め込み処理とエンコード処理を分離し、エンコード方式に依存しないシステムを実現したことです。2004年に発表したシステムでは埋め込み処理とMPEG-4による圧縮を一体化していました。しかし、これでは限定された使い方しかできないという声にお応えし、今回は2つの処理を分離したほか、NTSCの汎用入出力端子も採用し、既存の映像配信システムに電子透かしの埋め込み処理機能を容易に付加することができるようにしたのです(図2)。
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図2 動画電子透かしリアルタイム埋め込みプログラムの構成
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− お客さまがすでにお使いの映像システムの入力部分と出力部分の間に、カチッとはまるイメージですね。
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山田: まさにそのような使い方をねらっています。現在のエンコード方式ではMPEG-4ベースやMPEG-2ベースが主流ですが、互換性のない多くの種類の規格が用いられています。さらに、H.264など新しい方式も次々と実用化されています。コンテンツホルダーのお客さまはその中から、すでにお使いのエンコーダ、自社開発したエンコーダなどを自由に接続していただけるのが大きな強みです。
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