− 一見すると普通のノートとペンにしか見えませんね。ペンは少し太い感じがしますが…
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池田: そうですね。「デジタル研究ノート」といっても、ノート自体が電子端末に変わったわけではありません。紙のノートなんです。ペンは「デジタルペン」といって、超小型カメラやプロセッサ、メモリー、バッテリーなどが内蔵され、少し太くなっています。ノートには、紙の表面に0.3mm間隔で極めて小さな点が印刷されており、これがノート上のどのページのどの位置かを特定する情報を含んでいます。その上にペンを走らせると、普通に文字を記していくのと同時に、小型カメラが点で位置情報を読み取り、後でまとめてコンピュータに登録するという仕組みです。この技術はスウェーデンのアノト社によって開発され、日立や日立マクセルなどにより以前から事業化されているものです。
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− 筆跡そのものが電子化されるわけですね。
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池田: 筆跡情報に加えて、だれがいつ、どのページに書いたかといった基礎データも入ります。これまでも日立は、病院や製造現場などの記録用紙に書かれた内容をテキスト変換して取り込むシステムや、卸売業の伝票処理などにデジタルペンの技術を適用してきました。それに加え、書いた内容そのものを残すことに意味を持つ新しい使い方はないだろうかと考えたのが開発のきっかけでした。
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− そこで思いついたのが、研究者が使うノートだったわけですね。
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池田: はい。ご存じのように現在は、特許や知的財産を保護する観点から、研究段階で生み出されたアイデアのオリジナリティや、実験データ、論文内容の正当性を証明することの重要性が高まっています。企業や大学などの研究機関では以前から、日々の研究プロセスで生み出されるデータやアイデアを、各ページが1冊にまとまったノートに研究者自身で書き留める作業が行われています。そこで、“書く”という方式自体は変えずに、内容はデジタルデータとして確実に保存し、記載内容の正当性を証明できる仕組みを作れば、将来それが特許や論文に結実した際のオリジナリティを客観的に証明できるのではないかと考えました。デジタルペンには、それらの要件を支える基本機能がすでに備わっていましたし、日立にはデジタルデータの正当性を証明する強固な電子署名技術※がありました。それがこの研究開発を支える大きな原動力となったのです。
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− なるほど。では、デジタル研究ノートの使い方とメリットを具体的に教えてください。
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池田: 使い方としては、特殊なドットパターンが印刷されたノートに、デジタルペンを用いて研究内容や実験結果を従来どおりに書いていくだけです。書き終えたら、自分のPCに装備されたクレードルにデジタルペンを差し込めば、自動的に電子署名が施されたデジタルデータとしてサーバ内へ保存されます。どのページのどの文字が、何時何分、だれによって書かれたかが、きちんと証明できるデータとして格納されるわけです。
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図 紙のノートに筆記する方式で研究記録を 電子化して安全に保存
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また、大学や研究機関では、研究員が記入した後、上長や管理者がフローや記述に間違いがないことを確認して、日付とサインを記入します。こうした手順を踏むことにより、研究の記録としているわけです。デジタル研究ノートでは、ヒステリシス署名という強固な電子署名を用いて、筆記履歴を安全に保存することができます。これによって改ざん防止の効果が期待できます。
さらに最近は、PC上で作ったグラフや表、写真などを一度紙に印刷し、それを切り抜いてノートにはるという作業も行われています。そこでデジタル研究ノートでは、この切りばりした内容も文字と一緒にデータ化できるようにしました。

− 図形をはったノートのイメージも、そのままサーバに保存されるということですか?

池田: そうです。PC上でグラフや写真の印刷を実行すると、ドットパターンと一緒にプリントアウトされます。同時にどのドットパターンと一緒に印刷したかを含めて、グラフや写真のデータがサーバに登録されます。あとはその中から必要な部分をハサミで切り抜き、ノートにノリではり、デジタルペンで“割り印”代わりのチェックマークを付けるだけです。これで、ノートのどの部分に、どのグラフや写真がはられたかがサーバ上で一元管理されるのです。つまり、グラフや写真はイメージのみでなく、電子ファイルそのものとしても管理されています。このため、PC上のノートイメージから実際の表計算ファイルへも簡単にアクセスできるのです。これもデジタルならではの便利な特長といえますね。
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@ ドットパターンと一緒にプリントアウトされたグラフや 写真をはり付ける
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A デジタルペンで割り印の代わりとなる チェックマークをつける
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B PCに装備されたクレードルにデジタルペンを差し込むと自動的に電子署名が施されたデジタルデータとしてサーバ上で一元管理される
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