「従来、ナノレベルの構造は電子線描画というリソグラフィ技術で1点1点、つまり一筆書きのような方法でつくるしかなかった。ナノインプリントなら、型さえつくればいくらでも複製できる。超微細なナノ構造を簡単に、低コストでつくることができる画期的な技術です。半導体だけでなく、光デバイス、ディスプレー、ストレージなど、さまざまな分野に波及効果をもたらすインフラになると考え、開発を始めました」(材料研究所・宮内昭浩)
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日立が採用したのは、熱ナノインプリントという方式である。転写側に熱可塑性樹脂を使用し、加熱した樹脂にナノ金型をプレスした後、冷却して樹脂を硬化させる。また、樹脂素材の選択肢が多く、温度や圧力を制御することでさまざまな構造をつくることができる。その性質を利用し、金型の凹部よりも背の高いナノピラー(突起)を形成する「高アスペクト比(縦横比)ナノインプリント」の可能性を見いだした。
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ただし、ナノインプリントはプレスの技術だけでは成立しない。
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「精密加工から樹脂、加工プロセス、装置、マーケティングまで、あらゆる要素が必要な複合技術なんです。型の開発は日立電線、日立産機システム、樹脂・プロセス開発は日立研究所、装置は日立プラントテクノロジー、マーケティングは日立ハイテクノロジーズなど、日立グループのそれぞれの得意技術を生かして事業化を図りました」と言うのは、その舵取り役を担ったトータルソリューション事業部・西内重治。
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その成果が、2003年に発売した熱ナノインプリント装置だ。その最大の特徴は、大面積への一括転写を実現したこと。この装置で、日立は直径300mmのウエハー(半導体基板)全面に均一にナノ構造を転写することに世界で初めて成功、これは2004年ナノテク大賞を受賞した。
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「大面積になるほど高精度に均一に加工するのは難しい。ですが、それによって応用の可能性が一気に広がるんです。身近な例でいうと、光学部品、液晶ディスプレーの偏光フィルムや、水滴のつかない壁紙などにも適用が期待されています。また、両面転写や、フィルム状の長尺シートに連続的に転写する技術などにも取り組んでいます」(西内)
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バイオ分野への応用も面白い。日立の開発した「ナノピラー細胞培養シート」は、細胞の大きさより小さなナノピラーの上で細胞を育てるため、細胞がはがれやすく損傷が少ない、細胞に優しいシート。またピラーの径や密度を変えることによって、育成する細胞の形状などを方向づけることも可能だという。
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ナノインプリントはまだ若い技術で、開発課題が多い半面、さまざまな製品に適用される可能性も大きいという。ナノ加工の大量生産化は、私たちの生活をどう変えるのか?
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「デバイスの小型化で、たとえば人の一生をハードディスクに記録したり、検索したりすることも可能になるかもしれない。体に常に身につけて自動で健康状態を監視し、病気の予防に役立つようなデバイスも考えられます。しかもそれが新聞の定期購読並みに手軽にできる」(宮内)
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「ユビキタス社会の重要なインフラになるでしょうね」(西内)
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