「放射線治療施設というと、皆さんレントゲン装置を思い浮かべるかもしれませんが、規模からして全くケタ違いです。シンクロトロンという陽子の加速器があって、そこから治療室に陽子線を輸送します。M・D・Aの場合、治療室は4室。360度あらゆる角度から陽子線を照射できる回転式のガントリー治療室が3室、照射方向が固定された大小二つの治療設備をもった固定治療室が1室です。建屋は約85×35mもあります。
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M・D・Aは世界でも有数のがん専門病院です。世界最大規模の陽子線治療施設を受注できたのは、一つには筑波大での実績です。もちろん当社ならではの技術もアピールしました。たとえば陽子線の一般的な照射の方式は、散乱効果によってビームを広げ、患部の形状に合わせて照射する散乱体方式です。これに加えて私たちは、一筆書きのようにノズルを振って患部の形状と深さの両方を制御するスキャニング方式を世界で初めて導入しました。この方式には中性子のリスクを抑えるなどさまざまなメリットがあります」
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「日立がこのようながん治療システムに関わるきっかけになったのは、素粒子実験などの物理実験に使う研究用の加速器です。私も1980年に入社してすぐ、トリスタンという素粒子研究用の電子加速器の開発に参加しました。その当時、こうした技術を民生用、医療用に使えないだろうか、とよく話していたことを鮮明に覚えています。
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やがてそれが現実味を帯びてきました。そこにはコンポーネント技術からシステム技術へという展開があって、いくつかのブレークスルーが必要だったわけですが、1990年代後半になると、蓄積してきたこの加速器というコア技術を本格的に医療分野に使っていこうと。それが初めて結実したのが若狭湾エネルギー研究センターの『W-MAST』、医療も視野に入れた多目的加速器です。そして次に筑波大のPMRC。W-MAST納入から数えると10年足らずでここまできたということですね」
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「日立グループはこれまでも診断用の医療機器は数多く手がけてきていますが、治療用はきわめて少なく、自社のコア技術からそれが生み出されたというのは、技術者として誇り高い気持ちです。しかも、技術で社会に貢献することが日立の大きな理念ですが、今回のプロジェクトでは米国の患者さんたちにも喜んでいただけると自負しています。世界有数のがんセンターということで、よりグローバルな展開の足がかりにもなると思います。
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民生用の技術に求められるものは研究用とは違います。たとえば先端性以上に安全性、安定性が優先されます。患者さんにどれだけやさしいか、医師にとっての使い勝手はどうか……。それにこたえることで技術が鍛えられ、それは先端技術の開発にも必ずやフィードバックされるはずです」
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