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開発者に聞く



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このコーナーでは、日立製作所の研究所等で研究・開発を行っている技術テーマを中心としたコラムをお届けします。 研究員にインタビューを行い、技術テーマ解説・開発過程におけるエピソードなどを交えてわかり易くご案内いたします。
ビル内や構内の装置間を光接続する光送受信モジュールの大容量・小型化技術を開発
■ 光信号と電気信号の変換を行う光送受信モジュール

− 今回の技術が適用される「光送受信モジュール」とは、どのような役割を担うパーツなのでしょうか。
宍倉: 光ネットワークシステムの基地局やデータセンター、ビル構内などには、長距離伝送用の波長多重(WDM)伝送装置や、データ転送用のルータなどが多数設置されています。これらの装置間、あるいは装置内のボードどうしをつなぎ、光信号と電気信号の変換を行うインタフェースとなる部分が「光送受信モジュール」です。別名「光トランシーバー」とも呼ばれています。現在、こうしたWDM装置とルータ間、ルータとルータ間といった短い距離での光接続は、1個当たり3.3ギガビット/秒の光源または受光素子を12個並べることで、40ギガビット/秒の伝送容量を実現しています。しかし近年、ブロードバンドのトラフィック量が右肩上がりに伸びているため、さらなる伝送量の増大に対応しながら、通信装置の高性能化を実現するには、光送受信モジュールの小型化と大容量化が重要な課題となっていたのです。
− 光送受信モジュールは、現状でもそれほど大きなパーツではないように思えますが、これをさらに小型化することが求められていたわけですね。
坂: ルータやストレージの裏側を見たことがある方ならお分かりだと思いますが、光送受信用のコネクタがびっしりと並んでおり、特にストレージなどではその密度が限界にまで近づいていたんですね。いくら小さなパーツでも、さらなる小型化は必須要件だったのです。そこで注目したのが、これまで光の送信部と受信部が別々だったものを一体化するというアプローチでした。

■ 新モジュールは実質4分の1の容量に

宍倉: 私たちはまず光ファイバ内のビットレートを3倍に高速化し、同じ40ギガバイト/秒の信号を「3.3ギガビット/秒×12チャンネル」から「10ギガビット/秒×4チャンネル」で送受信できるようにしました。その上で、従来は個別に配置されていた送信器と受信器を一体化し、構成部品数の削減と大容量化を両立させることに成功したのです。これでルータ裏側の密度を大幅に稼ぐことができるようになります。
坂: 試作したモジュールの大きさは、長さ30ミリ、横幅12ミリ、高さ9ミリで、容量を3.2ccまで圧縮しました。従来のモジュールは約8ccの容量でしたので2分の1以下となりますが、実際には送信器と受信器が別々に必要だったため、それを一体化した新モジュールは実質的には4分の1ほどに小さくなったことになります。
図1 研究の目的とアプローチ
図1 研究の目的とアプローチ
※クリックして拡大図をご覧下さい
− 送受信器の一体化というのは、言葉で言うほど簡単な話ではありませんよね。
坂: そうですね(笑)。これまでの部材を単に2つ組み合わせるだけではコスト的にもサイズ的にもメリットがありませんから、送受信部を一体化した新しいレンズ構造を開発しました。具体的には、光を出す送信器の「面発光レーザー」と、光を受ける受信器の「フォトダイオード」を1枚のマイクロレンズアレイで構成しています。これにより小型化が図れ、かつ高コストの部材を半分に集約することができました。
宍倉: 2つの要素をきちんと実装する部分に大きな労力を費やしました。つまり今までは、面発光レーザーとフォトダイオードのレンズを別々に設計してやればよかったわけですが、そのレンズを一体化するためのオプティマイズ(最適化)がまず大変でした。さらに光は真っすぐにしか飛びませんから、ファイバーに光を入れる位置を送受信それぞれにきちんとした精度で実装する技術。これらが組み合わさり、初めて一体化が図れたわけです。
− 送受信器が一体化されたということは、ルータなどから外へ出て行く配線も半分になると考えていいわけですね。
坂: はい、配線数は半分になります。この効果はかなり大きいと見ています。当然、ルータや電送装置、ストレージ装置などの小型化にも対応していけるはずです。

■ ノイズの漏れ込みを防ぐため双方の配線を完全に分離

− レンズの一体化を図る上でほかに障害はなかったのでしょうか。
坂: 実はもう1つ、大きなハードルがありました。送信器と受信器を一緒に組み込むと、一方は信号を出す側、もう一方は信号を受ける側として、どうしてもノイズとしての電気信号が漏れ込んでしまう。これを“電気的クロストーク”と呼びますが、伝送速度が大きくなるほど、クロストークによる信号劣化の影響を大きく受けるため、送受信性能が低下するという課題があったのです。このままではチャンネル速度を10ギガビット/秒まで高めることが難しくなるということで、ノイズの漏れ込みを防げるよう、送信器側と受信器側の電源配線を完全に分離する遮へい構造を開発しました。具体的にはそれぞれの電気配線を両側面に引き出し、その間に遮へい金属を挿入するという仕組みですが、これも今回の大きな工夫の1つです。
宍倉: 結果としてこの遮へい構造は、面発光レーザーやICの放熱にも効果を上げることができました。試作した光送受信モジュールを使った伝送実験では、マルチモードファイバーで、装置間通信で必要とされる100mの40ギガビット/秒のエラーフリー伝送を実証しました。これにより、将来的な装置間光接続の大容量化に加え、ルータなどの小型・高性能化が期待できると考えています。
図2 試作モジュールと開発技術
図2 試作モジュールと開発技術
※クリックして拡大図をご覧下さい
※マルチモードファイバー : 光を通すコアと呼ばれる部分が太い光ファイバーケーブルのこと。長距離の伝送を必要としないギガビットイーサネットなどで用いられている。これに対し、長距離伝送などで使われる細いコアの光ファイバーは「シングルモード光ファイバー」と呼ばれる。

■ より大容量化と小型化にチャレンジしていく

− いま振り返って、最も苦労されたのはどのような点でしょう。
坂: 部品についても実装面についても、業界標準に準拠しながら、いかに付加価値の高いものを提供するかという部分でした。光ファイバーを結ぶインタフェースやボードに実装するコネクタなどは、どうしても標準品を対象とした設計になりますが、それでいて全体としてのボリュームは高密度設計で小さくしなければならない、コストも適正な範囲に収めなければならないという部分で、ギリギリの選択がありましたね。
− 今後の展開は。
坂: 実用化に向けた周辺技術の開発とともに、一層の大容量化と小型化を進めて行く予定です。例えば今回は40ギガバイト/秒の信号を送るための技術ですが、将来的には100ギガバイト/秒にも対応させていきます。そこでは光結合も非常に難しくなっていきますし、熱もかなり発生するでしょう。それらの課題をどう乗り越えるかが新たなチャレンジになってくると思います。
宍倉: 現在は1本の光ファイバーに同じ波長の信号を並べたものが対象ですが、今後は波長の違う複数の光信号を同時に利用するWDMやDWDM(高密度波長多重方式)にもこの技術を対応させていけるかもしれません。かなり先の話にはなるでしょうけれど(笑)。
− これからの展開に期待しています。本日はどうもありがとうございました。
※本研究は、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)の委託研究の一環として実施されたものです。
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