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このコーナーでは、日立製作所の研究所等で研究・開発を行っている技術テーマを中心としたコラムをお届けします。 研究員にインタビューを行い、技術テーマ解説・開発過程におけるエピソードなどを交えてわかり易くご案内いたします。
ネットワーク上に分散する映像データを一元管理できる、監視レコーダの仮想化技術
■ 遠隔監視の普及で、膨大な映像データが各所に分散

− 現在、映像監視システムはどのような形で普及が進んでいるのでしょうか。
吉永: 銀行やコンビニエンスストア、駅、空港など、カメラの台数が非常に多い大規模な監視システムが必要とされる場面では、ネットワーク型の遠隔監視が主流となっています。そこでは複数台の監視カメラでとらえた映像を、各監視エリア内のネットワークレコーダに録画する一方で、火災や人為ミスなどによるデータ消失に備え、IPネットワークを介してデータセンターに数か月単位でバックアップしていく方法がとられています。
 特にセキュリティの厳しい金融機関などでは、万一のシステム障害やネットワーク障害に備え、データセンター側に数か月分をバックアップし、最新1か月分についてはデータを二重化して監視エリアとデータセンターで蓄積する方法が普及してきました。このため既存のシステムでは、ネットワーク上の複数のレコーダと、センター内のストレージがそれぞれの映像データを個別に管理する形になってしまい、検索する際には、各レコーダやストレージを個別に閲覧しなければならなかったのです(図1)

図1 分散型映像記録の問題点
※クリックして拡大図をご覧下さい
長屋: また通常は、監視映像の記録を止めずに映像の閲覧・検索を行いますが、その間に必要な映像が、レコーダからセンターアーカイブに移動してしまうことも多々あるわけです。例えば監視カメラの数が膨大で、そのデータを常時ネットワーク経由でバックアップしている金融機関などでは、1秒間に1万フレーム※1程がセンター側にデータが送られている例があります。つまり映像データの保存先が、ローカルなレコーダからセンターのストレージへ、そこから長期保管用のテープストレージへと、ものすごい速さで移動しているわけですね。こうなると保存先の特定に時間がかかり、緊急時にも迅速に対応できません。そこで各レコーダとセンターアーカイブのデータを統合管理するための技術開発が強く求められていたのです。
※1:フレームとは映像を構成する1枚1枚の画像のことで、1秒の映像は30フレームで構成されている。そのうち間引いた2〜10フレームをレコーダに記録するのが一般的。

■ レコーダの仮想化を実現する映像プロキシサーバ

− 統合管理を実現した技術の仕組みを教えてください。
吉永: 基本となっているのは、分散しているレコーダやストレージを、あたかも1台のストレージとして使える仮想化技術です(図2)。この仮想化を実現するため、各レコーダやストレージへのアクセスと全フレームの所在管理を行う「映像プロキシサーバ」を新たに開発しました。ここではまず、保存される映像データのフレームすべてにIDを付与します。IDには撮影したカメラを特定する情報や、撮影された順序を示す数値情報が入っており、レコーダ内の映像やセンター側のバックアップ映像はすべて、このフレームIDで一元的に管理されます。次に、分散するレコーダやストレージに対してアクセスを代行する「映像プロキシ」という仮想レイヤを作り、映像を再生する際には“何月何日何時の映像が見たい”というクエリー(処理要求)を投げます。すると映像プロキシサーバが、実際のレコーダやストレージからIDをもとに映像データを取得してくるという仕組みです。これにより、データの保存場所がどこにあるのかを意識することなく、スピーディな検索・閲覧が可能となります。

図2 監視レコーダ仮想化技術
※クリックして拡大図をご覧下さい
長屋: 映像データの所在情報は、先ほどの金融機関のようなケースでは毎秒1万フレームも更新されるため、その更新情報だけでもネットワークには大きな負荷がかかってしまいます。そこで私たちはフレームIDを使って更新に要する通信量を大幅に低減する技術を開発しました。映像プロキシサーバは、各レコーダやストレージから一定の時間間隔で、その時に持っている全フレームの情報を受信しますが、その際にフレームIDの最大値(最新)と最小値(最古)のみを受信することで、通信量を低減させようと考えたわけです。これにより1レコーダあたり、10分間で1kB程度の通信量で所在管理が行えるようになりました。
− 必要な画像がいつでもスピーディに閲覧できるようになったわけですね。
長屋: ええ。効果を確認するため、監視エリアと距離的に離れたデータセンターを広域ネットワークで結んだ実験システムを構築しました。監視エリアには過去1か月分の映像を記録するレコーダ、データセンターには過去3か月分の映像を保存するバックアップ用レコーダと過去6か月分の映像を保存するアーカイブをそれぞれ設置し、映像プロキシサーバを経由して、短時間で各画像を閲覧・検索できることを確認しました(図3)。画像へのアクセスは、どのレコーダやストレージに対してもほぼ瞬時に切り替えられるため、人の目からはまさに1台のレコーダを操っているのと同じ感覚で使うことができます。
− 使い勝手が大幅に向上したわけですね。

吉永: 画像の検索・閲覧にかかわる利便性の向上に加え、アーカイブメディアや保管場所の選択肢も広がることから、運用管理やバックアップコストの低減にもつながると考えています。

図3 広域ネットワークによる仮想レコーダ実証システム
※クリックして拡大図をご覧下さい

■ レコーダのクラスタ化で安価に高信頼のシステムを実現

長屋: もう1つ、大きなメリットとしてあげられるのは、ストレージの仮想化によって、これまで実現が難しかったレコーダのクラスタ化を実現し、映像監視システム全体の信頼性を容易に向上できる点です。
 例えば複数のレコーダをミラー接続しても、1台のレコーダとしてクラスタ化できるため、万一1台が故障しても、システム全体を停止させず、もう1台で処理を継続できます。同様に、システム運用中でもレコーダの追加や入れ替えができますし、1台のレコーダとセンターストレージの同時記録による分散クラスタ化も可能です。単体の監視用レコーダは、サーバなどに比べて安価に購入できますから、大規模な映像監視システムになればなるほど、信頼性を高めながらのコストメリットを享受できるはずです。
吉永: さらにユニークな点は、従来の仮想化方式では難しかったシステム内部のストレージ(このシステムではレコーダ)を切り離しても、単体でそのまま利用できる点です。
− 今後の展開は。
長屋: この技術は、次世代映像監視システムを支える基盤技術の1つとなると、私たちは確信しています。その意味でも、映像アクセスの自動化を前提とするさまざまなシステムで、さらに応用範囲を広げていけるよう、大切に育てていきたいですね。
 例えば、類似画像の検出機能と連携させて、カメラがとらえた人物に似ている画像と情報を複数ストレージから瞬時に探し出すようなセキュリティシステム。セキュリティ以外では家庭内のストレージ、知人宅のストレージ、インターネット上のストレージサービスなどに保存してあるプライベートなデジタル映像の中から、ホームネットワーク経由で必要な映像を瞬時に引き出すようなシステムとしても威力を発揮すると思います。これからの新たな展開を、ぜひ楽しみにしていただきたいですね。
− 期待しています。本日はありがとうございました。
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