− ユビキタスデバイスなどの小さな機器にも組み込める通信ソフトの実装技術を開発されたということですが、これはどのような背景から誕生したものなのでしょう。
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鮫嶋: ユビキタス情報社会において、さまざまなデバイスがシームレスにネットワークし、システムとしてもきちんと機能していくには、現在のPCや情報システムで使われているTCP/IP、Webサーバといった標準技術を適用することが非常に有効です。しかし、携帯端末やデジタル家電などで使われている小型で低価格な組み込み型マイコンではメモリ上の制約があり、そのような通信ソフトを組み込むことは非常に困難でした。そこでわれわれは、通信ソフトの容量をマイコンに収まるレベルまで小さくしようと考えたのです。
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− 標準的なプロトコルで動く通信ソフトを搭載するには、これまでどれくらいのメモリ容量が必要とされていたのでしょう。
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藤岡: TCP/IPやWebサーバといった技術は、もともとPCやサーバで使われている技術です。例えばLinuxでは数メガバイト程度のメモリが必要です。より小型の機器向けに開発されているものもありますが、数百キロバイトというサイズのものが多かったですね。それを今回は家電や自動車などの組み込み系で広く使われているルネサス テクノロジ社のマイコン「H8/Tiny」の内蔵ROM 32キロバイトに収めつつ、高い処理能力を発揮できる形に最適化することに成功しました。
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− この1円玉ほどの大きさのモジュールに、無線通信に必要なソフトウェア機能がすべて収められているわけですね。
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藤岡: ええ。Bluetoothや無線LAN、TCP/IP、Webサーバといったすべてのプロトコル処理を16ビットのマイコン、1チップで完結しています。つまりこのモジュール単体でPCと同じネットワーク通信機能が実現されているのです。これをユビキタスデバイスに組み込めば、データの発信はもちろんのこと、通信先のPCや情報システム側からデータを取得することも可能です。例えばWebサーバにデータを送る、あるいはPC側のWebブラウザからデバイスの情報を直接読みに行くといったように、これまでのネットワークシステム運用と何ら変わらない使い方ができるようになります。
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図1 搭載ソフトウェアとモジュール外観
*1 SDO(Super Distributed Objects)
*2 ECHONET(Energy Conservation and Homecare Network)
※クリックして拡大図をご覧下さい
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− 技術開発にあたられた藤岡さんとしては、どのような点で苦労されましたか。
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藤岡: 通信ソフトをマイコンに搭載しようと最初に思いついたのは約3年前でした。どうせやるならできるだけ小さなサイズにしようと、小型をウリにしているH8/Tinyシリーズにチャレンジしたわけです。しかし何しろメモリ容量が非常に小さいものですから、単なる移植では入りきるわけがない(笑)。それにユーザーから見て使い勝手が不便になってもいけませんし、処理能力も遅くはできない。そういった数多くの課題を前に、最初はかなり悩みました。しかし、プロトコルスタックの仕様をすべて頭にたたき込み、本当に必要な機能はどこなのかを徹底的に絞り込んでいったところ、いつのまにかこのサイズに収まってしまったという感じです。
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鮫嶋: 本人は謙遜していますが、実際にはかなり苦労したはずですよ。あれだけの内容をこのメモリ容量に収めるには、マイコンと通信ソフト、それぞれの構造に精通した高度なスキルが必要です。彼にはその技能と根気があった。だからこそ、PCと比べて処理能力の低いマイコンでも、これだけのレスポンスを維持した最適化が行えたのだろうと思います。
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− これほどの小ささなら、どんなデバイスにも内蔵できそうですね。
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鮫嶋: 携帯端末やデジタル家電などに容易に実装できますし、既存の設備機器などにも、まるで“付せん”をはる感覚でネットワーク機能を付加できるのが最大の特長です。例えば工場設備やビル設備なら、センサネットと組み合わせて、その稼働状態を遠隔監視したり、全体効率をさらに上げるための情報収集を行う、あるいはオフィス内のPCや周辺機器などに取り付けて、稼働率や故障状況の一元管理を図るなど、さまざまな使い方が提案できるはずです。
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藤岡: ここにある1円玉サイズのほかにも、対象に応じてマイコンの種類や搭載ソフトを変えた10円玉サイズ、500円玉サイズなどを用意していますので、それぞれのシステムに最適なモジュールを選択することが可能です。
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鮫嶋: ただ、いくら1円玉や10円玉サイズでも、モジュールの価格はさすがに1円や10円ではありません。写真をお見せすると、よく誤解されて困ってしまうんですよ(笑)
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− 何よりも無線によるネットワーク化が簡単に実現できるのが嬉しいですね。
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鮫嶋: 既存端末をネットワーク化させるため、特別な装置やソフトウエアを後付けしたり、ケーブルを取り回したりする必要がありません。また、標準技術を使っているので、メーカー側も多機能なアプリケーションを容易に開発できる。これは大きなアドバンテージになると思います。それに、広く普及しているベストセラー・マイコンを使っているのでコストも大幅に安くできると思います。
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藤岡: 今回開発している技術は、日立がブリヂストン社の協力を得て開発している超薄型・軽量の新しい表示装置「電子ペーパーディスプレイ」にも適用されています。コンテンツを無線配信できる電子ペーパーディスプレイは、画像保持性のあるディスプレイモジュールに駆動回路、無線通信回路、メモリなどを一体化したもので、省スペース性と置き場所を問わない柔軟性が命です。そのため、通信機能を小型の装置で実現するこの技術の特長を大いに生かせるソリューションだと思います。
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図2 μWirelessWebを適用した電子ペーパーディスプレイ
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− 今後の展開は。
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鮫嶋: ユビキタス情報社会の進展に貢献できるよう、適用シーンをさらに拡大させていきたいですね。そのためにも、さまざまな機器や装置に応じたモジュールバリエーションの拡充、通信だけでなく他の拡張機能も搭載したいといったニーズへの対応などを積極的に進めてきたいと考えています。
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藤岡: 設備機器などにはり付けるタイプのモジュールなら、機器側から電気を供給してもらえるため問題はありませんが、電池で動く機器に装着するタイプでは、一定時間ごとにオン・オフを繰り返し、より長時間稼働できるような構造にしています。今後はそのアルゴリズムを工夫することによって、より低消費電力化を進めていきたいと思います。
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− さまざまな分野の機器や製品で、このモジュールが大活躍する日を楽しみにしています。本日はどうもありがとうございました。
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