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開発者に聞く



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このコーナーでは、日立製作所の研究所等で研究・開発を行っている技術テーマを中心としたコラムをお届けします。 研究員にインタビューを行い、技術テーマ解説・開発過程におけるエピソードなどを交えてわかり易くご案内いたします。
身につけるだけで健康管理のできるリストバンド型センサノード
■ 一円玉より小さい世界最小のセンサノード

− いま注目されているセンサネットとはどういうものなのかを、まず簡単に説明していただけますか。
山下: 身の回りのモノや人、環境の情報をネットワークで収集することで、社会を豊かにするさまざまなサービスに結びつける技術をセンサネットといいます。そして情報を集めて送信するための端末がセンサノードです。センサノードは、無線通信機能や電池、温度・湿度・加速度・人感・照度・赤外線など、さまざまな目的に応じた各種のセンサで構成されます。
 センサノードはワイヤレスなので、配線や設置のコストが低減できます。また、アドホック通信機能を取り入れており、面倒なネットワーク設定も自動化されています。これを、モノや施設に設置することで、ビジネスの現場や施設の状況・環境がインターネット経由で遠隔からも正確に把握できるのです。今まで以上にリアルタイムな情報感知・送信が可能となるため、的確なサービスのオペレーションに結びつけることができます。

図1 パーソナルヘルスケアへの適用
※クリックして拡大図をご覧下さい
− それを今回、人が身につけられる形に小型化したということですね。
山下: これまでも日立は世界最小クラスのセンサノード開発で世界をリードしてきましたが、今回は常に人が身につけられるよう、さらなる小型化を図りました。具体的には無線通信機とそれを制御するマイコンに半導体分野の小型化技術を生かし、センサも含めて一円玉よりも小さい15mm×15mmのチップに納めることに成功しました。いわば世界最小の、ネットワーク機能を備えたコンピュータですね。

写真1 世界最小のセンサノード
− それがこの腕時計型の小さなケースに収められているわけですね。
山下: はい。ライフサイエンス研究センタが開発した脈拍センサと、加速度センサ、温度センサが一緒に収められていますので、ふだん身につけているだけで、一定時間ごとに脈拍や体の動きを計測できます。計測したデータは無線基地局を介してサーバに送られ、データ蓄積や遠隔地からのモニタリングが可能です。通信距離も従来のものより拡大し、見通しで100mぐらいは届きます。
 小型化を図ったぶん、電池の寿命も重要な要素となってきます。そこで低消費電力の無線通信規格を採用することで消費電力を低く抑える一方、ソフト制御の部分電源遮断によって待機電力も従来の10分の1程度に削減しました。

写真2 リストバンド型センサノード

■ 家族の絆と健康を結ぶネットワーク

− リストバンド型の無線センサを開発した理由を教えてください。
栗山: 私が所属するライフサイエンス研究センタでは健康・安心な暮らしに貢献する技術として、脈拍センサや加速度センサを使った健康管理や安否確認の研究を続けてきました。現在の日本では独居の高齢者の方がどんどん増えていますので、毎日健康に過ごされているか、体調に変化はないかといった情報を、離れたご家族や医療関係者などが逐一知っておきたいといったニーズがこれからさらに拡大してきます。そこで、脈拍と身体の動きを直接センシングする技術と、それらの情報を一定時間ごとに自動送信できるセンサネット技術を組み合わせれば、今までにないフルタイムの安否確認、健康管理のサービスが提供できるのではないかと考えました。

図2 モニタソフト画面
※クリックして拡大図をご覧下さい
− そのためにも、いつも身につけておくセンサが必要だったわけですね。
栗山: ええ。脈拍を測ること自体は既存の計測器で簡単にできます。しかし、フルタイムの健康管理や安否確認のためには24時間、毎日つけていただかないと意味がありません。これをつけたまま外へ出歩いて、それがずっと計測できる状態になったということで、私たちとしては研究内容も価値観も大きく変わりました。
 脈拍センサと加速度センサをあわせれば、例えば今は睡眠中、今は普通に歩いている、今は少し運動されていますねといった毎日の生活リズムと体調が時系列のデータとして蓄積されていきます。それをもとに、昼間のこの時間帯はいつも活動されている方が、昨日からあまり活動していない、ちょっと体調を崩されているのではないかということが把握でき、迅速に何らかの対応を図ることができるのです。そのような新しい形の健康管理サービス、家族のきずなと健康をつなぐネットワークを実現するためにも、自然に身につけられる超小型の無線センサが重要な要素になっていたのです。

■ 幅広い事業分野へセンサネットの適用を拡大

− 今回はワイヤレスインフォベンチャーカンパニーから、実際にこのリストバンド型無線センサをセットしたトライアルキットが発売されましたね。日立としては、どのような事業展開を考えているのでしょうか。
小故島: センサネットはシステム全体として付加価値をどう提供できるかが問われるソリューションビジネスです。そこでワイヤレスインフォベンチャーカンパニーでは、社内に専門組織を設置し、日立が開発した各種センサネットを核としたシステムを「日立AirSense」という名称で提供しながら、センサネット事業の積極的な推進を図っていこうと考えています。今回販売を開始したのはリストバンド型とポータブル型のセンサノードに、ゲートウェイや充電池、モニタソフトなどを必要なユニットをすべてセットして、箱から取り出せばすぐに使える製品として提供するものです。
 トライアルキットと位置づけているのは、この先進的なモデルを、さまざまな分野のお客さまにまず使っていただき、そこから得られるご評価や問題点をしっかりとフィードバックしながら、ユビキタス情報社会を支えるリアルで効果的なソリューションへと進化させていきたいと考えたからです。添付してあるモニタソフトは、あくまでサンプル的なものですが、センサノードから得られる脈拍や加速度、温度などの情報がすべて表示できるので、そのデータを別のアプリケーションと連携させながら、新しいサービスが生み出せる仕掛けになっています。
− どのような使い方を提案していきたいと考えておられますか。
小故島: 建物の壁などに設置するだけで温度、湿度、振動などを検知できるポータブル型は、ビルの空調管理や地震対策、食品工場での衛生管理などの分野にご活用いただけると思います。一方のリストバンド型は、先ほどの話でも出ましたように、健康管理、ヘルスケア、在宅介護、病院内での活用といった分野で、まず具体的なサービスが立ち上がってくるのではないでしょうか。センサを装着している人がみずから操作しなくても、その行動パターンの変化を自動送信してくれることで、さまざまな作業を外部から見守るサービスなどにも使えるのではないかという声も寄せられています。
山下: リストバンド型センサノードには、装着した人からも何らかの信号を送るためのコールボタンやOKボタンといった入り口を設けています。ネットワークからはディスプレイ上にメッセージも送信できるため、工夫次第でいろいろなアプリケーションに適用できると思います。従来型のセンサネットに、そういったコミュニケーションツールとしての付加価値をうまくつけられれば、適用範囲はさらに拡大できるでしょうね。
− 今後の展開は。
山下: リストバンド型センサノードについては、高齢者の健康状態を見守るサービスなどへの活用を視野に、できるだけ早期の実用化をめざしていきます。そのためにも、さらなる低消費電力化と小型化による装着感の軽減に取り組んでいきます。
小故島: 日立グループは、ビル管理や電力、産業、流通、交通、都市開発といった、さまざまな事業に携わっていますから、そうした分野にも多様なセンサネット技術を最適な形で組み合わせていくことが可能です。その中で、利便性だけでなく、安全性や信頼性の向上、災害対策などにも貢献できる新たなサービスの実現をめざしていきたいですね。
− 本日はどうもありがとうございました。
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