− どうして今、遠隔診断の技術にこれほど注目が集まっているのでしょうか。
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鈴木: いくつかの要素があると思います。まず、いわゆる「2007年問題」などで、さまざまなシステムを開発・保守してきた多くのベテラン技術者が引退してしまうことです。このため、「人」の経験やノウハウだけに依存しない新たな保守技術の確立が急がれています。また、現在の遠隔診断システムは、保守員一人ひとりの経験則で判断している場合が多いため、どうしてもスキルの差によって診断に波が出てくる。さらに、診断機能を内蔵した機器の場合、アラームを発したときにはすでに故障停止しているケースや、問題がないのにアラームを発してしまうことなどがありました。そこでこれらの課題を解決する、より効率的で精度の高い診断ソリューションが必要とされてきたのです。
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図1 遠隔診断説明
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谷越: 発電所や鉄道の運行管理システムといったミッションクリティカルな用途では、24時間フルタイムで監視員をつけるのは当然ですが、ばく大なコストがかかります。一方、家電や自動車、設備機器などの遠隔監視で専門の監視員を確保するのは、量的にもコスト的にも非常に難しい。そこで幅広い分野の機器を対象に遠隔診断を適用できるシステムはできないかという声が、大きなニーズとしてありました。
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− そこで今回開発されたのが、「故障クラスタリング技術」という手法を使った新しい遠隔診断システムだとうかがっています。どのような特長があるのでしょう。
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鈴木: 対象製品を選ばない汎用的な診断法を備えていることです。従来から遠隔診断にはさまざまな手法があり、大きくは製品ごとに最適化された「物理モデル」からのアプローチと、対象を問わず、実績データにもとづいて確率的に診断を行う「データモデル」からのアプローチに分けられていました。
物理モデルの手法は、データ精度が良い代わりに、対象が変わるとモデルが使えなくなるため、最近のようにプログラム内容が複雑でモデルチェンジも頻繁な製品に対応していくことは手間も時間もかかるため大変です。
一方のデータモデルにも複数の手法が存在しますが、めざすところは同じでもコストがかかるもの、異常か正常かのデータ分布をあらかじめ仮定しなければならないものなどがあり、不特定多数の製品を対象に低コストで効率的な遠隔診断を行いたいという私たちの目標とは少し違っていました。そこで開発したのが、特定のデータ分布を仮定しなくても、その機器が正常か異常かを高い精度で予知できる「故障クラスタリング技術」です。
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− どのような仕組みで故障の可能性を予知できるのでしょう。
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鈴木: クラスタリングとは、データの中に潜んでいる価値ある情報を掘り出すデータマイニング技術の1つで、データの集合を部分集合(クラスタ)に切り分け、それぞれのクラスタに含まれるデータが、ある共通の特徴を持つよう自動分類する仕組みです。今回は、ネットワーク経由で収集した稼働データをセンターサーバに蓄積し、同じ機器から集められた数値を多次元空間上でクラスタ化していく手法を用いました。ここでいう稼働データとは、例えば自動車であれば燃料消費やエンジン回転数といった機器の状態データや、気温や天候のような周囲の環境データのことで、これらのデータから機器の状態を診断します。
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図2 遠隔故障診断技術
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同じ機器を同じように使えば、そのふるまいも同じようになるはずです。そこで各機器の状態データや周囲の環境データなどを比較計算していくと、正常なデータのクラスタと異常なデータのクラスタが自然に分かれて見えてくるようになります。そこから、各機器のデータが正常な値からどれだけ離れているか、異常な値にどれほど近いかなどで、その異常度合いを数値化することができるのです。
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谷越: 健康診断に例えると、その人が健康かどうかは検査結果の各数値が正常な範囲にあるかどうかで見ているわけです。でも実際には、普段から血圧が高い人であったり、年齢的に見れば異常とはいえない範囲内であったりもする。その総合評価が精度的に重要な要素となるわけです。今回の技術も各機器から集められたデータを単純に見ているのではなく、どのような運転モードで何時間使われ、どのような状況下でその数値が出たのかまでを、ほかの製品の数値と比較検討しながら詳細に分析することで、実際の故障が発生するかなり前の段階から、異常を予知することが可能と考えています。
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− 正常、異常なクラスタが自然選別されるため、あらかじめ分布パターンを設定する必要がないわけですね。
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鈴木: ええ。だから機器を選ばず、汎用的に使うことができるわけです。各機器に備わった制御モードをパラメータとして使うため、診断精度が高いのも特長です。
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