山口: PCの計算能力で高速・高精度の洪水シミュレーションを行うには、計算対象となる格子(メッシュ)サイズを適切に設定し、いかに高速計算させるかが最も重要な課題となります。例えば中小河川の決壊は、格子サイズを50m四方に区切って計算すると良好な精度が得られるといわれています。しかし従来方式ではこの範囲で10時間分の推移を計算するのに、バッチ処理で6時間もかかっていました。これではリアルタイムに結果を出すことはできません。そこで私たちは、計算領域を削減することで大幅な高速化を図ろうと考えたのです。
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図1 50メートル四方単位での洪水シミュレーション結果例
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− 計算領域を限定してしまうということですか。
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直野: ええ。従来は堤防が決壊し、洪水が発生して広がっていく計算を、切り取られた領域全体を使って行っていました。それがシミュレーションの世界では常識だったわけですね。しかし私たちは“それってムダじゃない?”と考え(笑)、シミュレーションの計算途中で、GISに計算する領域を広げてくださいと要求するアルゴリズムを作りました。つまり、堤防が決壊した時点では、堤防が決壊する領域の周囲のみを計算し洪水流が広がるのに合わせて隣の領域を足しながら続けて計算していく方法です。これによって計算量の最小化が図れ、従来6時間かかっていた計算を3分以内で達成できるようになりました。
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図2 「水害情報システムのイメージ」
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− コロンブスの卵的な発想ですね。
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直野:はい。GISとシミュレーションの世界の両方を知っていないと、なかなか発想できないアイデアだったかもしれません。格子サイズを細かくしたため、スピードだけでなく精度面でもいい結果が出ました。昨年発生した、ある洪水のシミュレーション結果を実際の現地調査結果と比較したところ、従来方式より約3倍の精度向上が図れていました。これらの要素によって、近年課題になっていた中小河川の決壊に対応する中規模区域のリアルタイムシミュレーションをPC上で初めて実現できたといえるわけです。
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図3 「高速計算アルゴリズム」
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