− 今回の研究テーマである「飲酒が脳機能に与える影響」は、どのような観点から行われたものなのでしょうか。
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牧: 長らく生活習慣病の研究をされていた大阪大学の森本先生は、ライフスタイルの1つである飲酒が、アルコール依存症や肝臓疾患などの発症リスク、あるいは認知行動の変化とどう関わっているのかを、脳機能の面から解明したいと考えていらっしゃいました。また、飲酒運転による交通事故が深刻な社会問題となっていることから、飲酒による脳機能への影響を知ることや、薬物の一種としてのアルコールが脳機能へ与える影響を客観的に評価することも、それぞれ重要な課題であると考えられていました。これまで、こうした研究ではfMRI・PET・MEG(脳磁図計測装置)という、大型で拘束性の高い装置を用いていたため、飲酒後の長時間にわたる変化を検討するのはかなり難しかったわけです。しかし光トポグラフィ装置なら、容易にこれらの長時間計測が可能となるため、今回は大阪大学と日立との共同研究という形で、飲酒が脳機能に与える影響の研究に取り組むことになったのです。
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− 具体的な実験内容を教えてください。
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牧: われわれが今回、最も重要なテーマとして考えていたのが、遺伝子と脳との関係です。アルコールというのはアルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドという代謝物に分解され、その後、アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)によって酢酸に分解されます。しかしこのALDH2の働きは、私たち東洋人だけが遺伝子の違いによって「活性型(56%)/お酒に強いタイプ」「低活性型(40%)/お酒に弱いタイプ」「不活性型(4%)/全く飲めないタイプ」の3つに分かれているんですね。ちなみに西洋人はほとんどが活性型で、お酒に強い人々が非常に多いのです。
一方、東洋人の半数近くを占める低活性型と不活性型の人々は、アセトアルデヒドが体内に蓄積するため、顔が赤くなったり、吐き気がしたり、二日酔いが起こったりします。つまり、アルコール代謝に関わる遺伝子の違いによって、疾患リスクや行動への影響が異なってくる。そこで、飲酒した際に生じるアセトアルデヒドが、ALDH2遺伝子型の違いによってどう変化するかを、今回の評価・検証における大きな目標ととらえました。
具体的には、活性型6名、低活性型4名の被験者に、体重1kgあたり0.4mlの水割りウイスキーを摂取してもらいました。これは体重60kgの場合、ビール480mlに相当する飲酒量です。そして摂取20分前、摂取直後、20分後、40分後、60分後の各時間帯に約10分間の視覚刺激を与え、光トポグラフィ装置で脳の視覚機能に関わる部位の脳血液量の変化を計測したわけです。
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− 結果はどうでしたか。

牧: 脳活動信号の最大値の変化については、活性型が飲酒前後でほとんど変化がないのに対し、低活性型では時間経過とともに脳活動信号値が大きくなることがわかりました。これまでの採血による研究でも、血中アセトアルデヒド濃度は、飲酒60分後にピークとなることが分かっています。今回の最大値の時間変化も、同じく血中アセトアルデヒド濃度の影響を反映しているものと考えられます。
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図2 飲酒後の脳活動画像 −脳活動信号の最大値までの時間−
※クリックして拡大図をご覧下さい
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一方、脳活動信号が最大を示すまでの時間変化についてですが、ここでは活性型が飲酒前後でほとんど変化がないのに対し、低活性型では飲酒後20分経過したときに信号が最大値になるまでの時間が最も短くなることがわかりました。つまり低活性型では飲酒20分後に、脳活動あるいは脳血管の特性が変化するということです。
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