− センサネットとは、どのようなシステムなのでしょう。
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鈴木: ユビキタス情報社会におけるIT利活用の高度化や多彩なサービスの実現には、人やモノの状況、そして周辺環境を正確にセンシング(感知)し、状況に即した最適なサービスと結びつけるためのソリューションが不可欠です。それがここ数年、話題になっている「センサネット」と呼ばれるシステムで、実際のセンサー端末であるセンサノード、中央の管理サーバ、それらの無線通信を仲介する基地局(アクセスポイント)、アプリケーションなどで構成されています。
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− センサノードは、RFIDやミューチップなどと同じようなジャンルのデバイスと考えていいのでしょうか。
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鈴木: 確かにセンサノードは、RFIDやミューチップ、非接触ICカードといったものと同じ、近距離データ通信を行う「ユビキタスチップ」の仲間でもあります。その中での違いを簡単に説明しますと、「ミューチップ」は内部に識別コードを持っていて、無線でそれを読みとるためのデバイス。そこにマイコンを組み込み、少し複雑なデータ処理を行えるのが「非接触ICカード」。この両者はみずから電源を持たず、無線からエネルギーをとって動きます。
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図1 電池搭載型としては世界最小容積となる6.9cm3(2.3cm×2.0cm×1.5cm)のセンサノード。内蔵電池は1年以上の寿命を持つ
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これに対し「センサノード」は、電池とマイコンを内蔵し、継続的なセンシングを自発的に行えるのが最大の特徴です。つまり、電源とマイコン、センサー、無線通信機能をすべて備えた“ユビキタスなネットワークコンピュータ”ともいえる存在なのです。
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− それがネットワークとつながり、さまざまな情報を管理者側に伝えるわけですね。

鈴木: ええ。センサーから得た温度や湿度、加速度、人の有無などの情報をネットワーク経由で伝えることで、さまざまなモノや人、環境などの状態をリアルタイムに把握することができます。これにより、ビルの快適環境を維持するシステム、侵入監視システム、プラントの遠隔監視システムなど、セキュリティや防災、省エネといった幅広い分野への応用が期待されています。
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− 今回は世界最小のセンサノードを開発されたということですが、やはりセンサネットの普及には、端末の小型化が絶対条件なのでしょうか。

鈴木: そう考えています。例えば壁に取り付けて使う場合なら、大きさはそれほど気にならないかもしれません。しかしユビキタス情報社会におけるセンサネットの適用は、常時人の身体に付帯したり、個々のモノに取り付けて、その動きや温度差を検知するサービスなどが多くなってきます。その場合はやはり、センサノードのサイズが小さくなければ使いにくい。しかも、メンテナンス面からは電池寿命も長くなければなりません。それが、世の中の幅広い場面での活躍が期待されるセンサネットのいちばんの課題だったのです。
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図2 専用ケースに収められたセンサノード
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− そこで今回、センサノードの小型化と電池の長寿命化を両立させる新たな技術を開発されたわけですね。その内容を詳しく教えてください。

鈴木: センサノードを小型化するには大きく2つの方向性がありました。1つは部品の小型化と高密度実装による「小型実装」の取り組み、もう1つが電池を小型化しながら寿命も伸ばす「低電力化」への取り組みです。
小さな部品で作るという部分は、日立グループの総合力がものを言いました。実際に無線装置やマイコンは半導体技術の進展で年々小さくなっており、今回の試作品に関しても、部品自体を新たに作ることなく、グループ内の既存部品で間に合いました。
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しかし電池に関しては、小さくすればするほどエネルギーも小さくなってしまう。結局、小さな電池でも長持ちさせるには、いかに低消費電力で動かせるかがカギとなります。そこで、不要な信号待ち受け時間を減らす「無線ネットワーク制御」や、ノードと基地局との混信防止を図りながら、消費電力あたりの通信処理量を最大化する「アクセス制御」、さらには動作時に不要な回路の電源をこまめに切る「電源遮断制御」などの新技術を開発し、無線通信を5分に1回行った場合なら、1年以上動作する長寿命化を実現したわけです。
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図3 電池を内蔵しない太陽電池版のケースもある
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− どのあたりの制御技術で苦労されましたか。
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鈴木: センサノードでいちばんエネルギーを消費するのは無線通信しているときなんですね。そこで必要なとき以外は通信をしない、あとの時間は完全に寝ている状態にする「間欠発信型」の無線ネットワーク制御、この部分の開発に最も時間を費やしました。
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センサネットでは、センサノードがデータを送信すると、管理サーバが「確かに受け取った」という確認を送ります。またサーバ側からは「次はこのデータを送れ」といったような指令もセンサノードに対して定期的に送信する仕組みとなっています。しかし携帯電話のように、連絡がいつ来るかわからないと、センサノードはずっと待ち受け状態でエネルギーを消費してしまう。そこで、センサノードがデータを送信した後、一瞬だけ待ち受け状態となって受信を行う通信制御を考案しました。つまりは“答案”を返すと同時に、次の“宿題”をもらってくるイメージですね。こうすれば、サーバ側から定期的に指令を受け取りつつも、待機電力を大幅に削減できます。
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図4 ネームホルダーにも収まり、人の位置や行動をセンシングできる
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− 結果的に、電池搭載型としては世界最小容積のセンサノードができ上がりました。これを生かして、どのような可能性が開けてくるとお考えですか。
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鈴木: インターネットは、人の扱う情報の量と質に大きな変化を及ぼしました。しかしそれは、コンピュータに記録された膨大な情報にネットワークを通じてアクセスし、皆でシェアして利用する形が基本だったと思います。それに対してセンサネットは、いま世の中で起こっているリアルな情報が直接コンピュータの世界に入っていく。そしてその生きたデータを使うことで、ビジネスや社会生活に新たな価値を与え、安全で快適な社会を実現するサービスを創造できる可能性を持っている。私はそう考えています。
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図5 センサネットで広がるユビキタスサービス
※クリックして拡大図をご覧下さい
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− 今後の展開は。

鈴木: センサノードのさらなる小型化と低消費電力化を進めていきます。最終的には1cm四方、つまり1立方センチメートルの容積にするのが目標です。同時に、より幅広い分野に適用できるサービスソリューションの開発も進めていきます。当然、それぞれのサービスに最適なセンサノードのカタチやサイズというものが出てくると思いますから、実際に使われるシーンを想定しながら、皆さんの期待に応えられるデバイスとサービスの開発に取り組んでいきたいと思います。
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− 期待しています。本日はどうもありがとうございました。
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