





このコーナーでは、日立製作所の研究所等で研究・開発を行っている技術テーマを中心としたコラムをお届けします。
研究員にインタビューを行い、技術テーマ解説・開発過程におけるエピソードなどを交えてわかり易くご案内いたします。
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360度どこからでも見える立体映像ディスプレイには、 研究者たちの夢が投影されていた「Transpost」
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■ 発想は、ガソリンスタンドの風車
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一体、どんな人が360度、立体ディプレイを開発しているのか。僕は個人的にステレオ写真やホログラフィといった「なんちゃって3D」が大好きなので、興味津々だった。さぞや理系まっしぐらの俊英が登場するんだろうなと想像していたら、主任デザイナーの星野剛史さん、そして大塚理恵子さんは全然違うタイプの人だった。
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「最初に頭に浮かんだのはガソリンスタンドなんかにある、クルクル回る看板なんですよ」(星野さん)
え、あの風でクルクル回る、「低価格」なんて書いた看板?
「風でクルクル回ると、書いてある文字がどこからでも見えるじゃないですか。平面のディスプレイは、ある一方面からしか見えないでしょう。あぁ、液晶ディスプレイかなんかをくるくる回せば、どこからでも見られるかなと思って。で、作りかかったんですけど、シンクロさせなきゃいけないんです。機械を回すのも大変だし、同じ絵しか見せられない。方向によって違う絵を見せようとしたら、ガソリンスタンド方式では限界があった」(同)
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360度、ぐるっと回って見てみた
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方向によって違う絵?考えてみると、そりゃそうだなぁ。例えば「バーチャル経営会議に出席している重役」をイメージしたとして、正面だけじゃなく、横顔とか後ろ姿も再現しなきゃつまらない。「振り向いて返事をする」みたいなことがないとバーチャルじゃないなぁ。
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■ プロジェクターを活用し、短期間で完成
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「それで、去年の1月頃、プロジェクターを使えばうまくいくかなぁと思いついたんです」(星野さん)
そこから最終的なシステムまで組み上げるのは、あっという間だった由。ちょうどその時期、日立に入社してきたのが大塚さんだった。チーム一丸となった試作が始まる。大塚さんはかなり面食らったようだ。
「入社して半年後ぐらいに、あの大きな円筒が研究室にやって来て、そのときはまだこの話をまったく聞いていなかったので、何だろうこの大きいのはなんて思ってて。そしたら『立体画像を作ってみない?』と言われて、はい、やってみます(笑)」(大塚さん)
「彼女は情報科学科出身なんです。数学が得意だと聞いてたので、CGの配置をプログラミングするのも得意なんだろうなと思って頼んだんです」(星野さん)
とりあえず最初のバージョンが完成したのは、半月後のこと。改良を加えていって、社内で研究発表会という運びになるのだが、ちょうどその時期、SF映画『マイノリティ・リポート』が公開されていた。
「気になって見に行ったんですけど、出てくる立体画像がすごくて、研究室のと何か違う…って(笑)」(大塚さん)
「僕は『スターウォーズ』のエピソード2を見て、立体画像の手紙が出てくるところで、あ、同じだと思ったけどね(笑)
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■ 妖精の宝物のような美しい3D映像
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実際に新型立体映像システム「Transpost」を見せていただくと、確かに『マイノリティ・リポート』のホンモノそっくり的幻惑感とは全然質の違うものだ。
小さな筒のなかで3D画像が美しく揺らいでいる。物凄く不思議な印象だ。おとぎ話に出てくる妖精の宝物か何かのようだ。
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「イベントの案内嬢」をイメージしたデモ映像は、確かに『スターウォーズ』の一シーンを連想させた。小さな女性が筒のなかで案内をしてくれる。360度、ぐるっと回って見てみたが、後ろ姿はフードにかくれていて笑ってしまった。こういうときの人間心理はおもしろいなぁ。映像だとわかってても前に回りたくなる。ちゃんと顔を合わせて、目を見て話を聞きたくなる。このサイズは神秘的な魅力がある。すぐに展示イベントの人気者になるだろう。ただ「バーチャル経営会議」を想定すると、人間の実寸サイズが必要だろう。
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面白いことは絶対に世に広まる
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「可能だと思います。畳くらいのスクリーンを回して映像を投射すればいいわけですから。次にやりたいのは、あの筒の内側から見た画像が見れるっていうことですね。リアルタイムで双方向に見える」(星野さん)
なるほど「バーチャル経営会議」の重役が『南くんの恋人』サイズだったら戦略の説得力足りないかなぁと心配していたが、次の課題はむしろ会議室全体の360度の光景を、画像の被写体である重役さんにリアルタイムで見せることか
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■ 面白いことは、絶対に広まる
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現在、ゲーム業界の問い合わせが一番多いということなので、おそらくアミューズメントの分野から一般化していく技術だと思う。星野さんは「缶コーヒーくらいのサイズ」で、プリクラみたいに自分の立体画像をとる機械はどうだろうと、日夜、考えをめぐらせている。お二人とも面白いことを思いついて、作ってみるのが大好きな人なのだった。面白いことは絶対に世に広まる。
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