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開発者に聞く



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このコーナーでは、日立製作所の研究所等で研究・開発を行っている技術テーマを中心としたコラムをお届けします。 研究員にインタビューを行い、技術テーマ解説・開発過程におけるエピソードなどを交えてわかり易くご案内いたします。
ビジネス環境の変化に柔軟に対応する次世代運用管理技術
■ コスト低減と複雑さの解消が最大の課題に

− 今回の技術開発の目的から教えてください。
高本: われわれは研究に先だって、大規模なiDCの運用者や、1,000人規模のユーザーを抱える企業のシステム管理者から徹底的なヒアリングを行いました。その結果、皆さんが最も解決したい課題としてあげられたのが、常に大量のサーバを設置しておかなければならない「コスト負担の低減」と、ネットワークシステムの大規模化によって現状構成が把握しきれないという「複雑さの解消」でした。
 なぜ現状ではコストが高くついてしまうのか。それは1つのシステムで多数のユーザーに多数のサービスを提供しつつ、サービス品質も維持しなければならない点にあります。常にピーク時の負荷に耐えうる数のサーバを用意しておけば、確かにシステムダウンなどのリスクを回避することはできます。しかし1つの事例をあげれば、定常時のサーバ稼働率は20〜30%にすぎず、残りの70〜80%はピーク時にのみ使われる。つまり、その他の時間帯はサーバ能力が遊んでいるわけですね。これが運用管理コストを増大する大きな要因になっているのです。
垂井: 一方、近年ネットワーク構成が大規模・複雑化するにつれ、多くのシステム管理者が、現状構成を必ずしも正確に把握し切れていないという現状があります。これは、どの現場でも日々頻繁にシステムの変更要求がくるために、人手による構成管理に限界がきていることが大きな要因です。これではトラブルが発生しても、どのネットワーク系統に問題があるのか特定するまでに時間がかかり、対策が大幅に遅れてしまう。あるいは、サービス負荷が高くなりそうなので新たにサーバを追加しようと思っても、構成変更に手間取り、サーバ1台を追加するために必要な作業を合計すると約2時間もかかってしまうケースもありました。こうしたネットワーク構成の複雑さを解消することも、今回の重要な研究テーマでした。

■ 動作履歴をもとに低い負荷のサーバを中長期予測

− 開発した技術の概要を教えてください。
高本: 「中長期未来予測によるリソースの動的追加技術」と「ネットワーク情報の自動管理によるサーバの簡易追加技術」という2つの技術を開発しました。まずは前者からご説明します。
 これは、平常時のサーバ稼働率が低いのなら、複数のサービス間でお互いにサーバを融通し合い、その負荷を平坦化しようという考え方がベースになっています。当然、だれもが考える話なのですが(笑)、現実にはどこから融通すればいいのかわからない。また、負荷の高低を正確に把握しきれず、融通しても結果的にサービス品質を落としてしまいかねないのが技術的にも大きな壁となっていました。
− 負荷が低い方から高い方へ融通しても、直後に低かった方のサーバ負荷が上がってしまう可能性もありますからね。
高本: そうなんです。そこで私たちは、サーバの動作履歴をもとに中長期予測を行う方法を考案しました。特徴的なのは、通常なら今後の負荷が高まる方を予測してピーク時に備えるわけですが、私たちは逆転の発想で、負荷が低くなる方を予測します。例えば(図1)にあるようなサービスB、サービスCの動作履歴をそれぞれ蓄積し、サービスBは週末に負荷が高い、サービスCは月末に負荷が高いといったクセをつかみます。その蓄積から、この期間ならサービスAにサーバを融通しても大丈夫という予測が立てられ、非常に的確に負荷の平坦化が図れるというわけです。


図1 動作履歴をもとに中長期予測

※クリックして拡大図をご覧下さい
− クセをつかむには、ある程度の時間がかかるのですか。
高本: 基本的にはそうですが、管理者の方が手動でポリシー設定することも可能です。また、リアルタイムにも情報を蓄積しており、予測した負荷と現状の負荷に食い違いがあれば自立的に修正する機能が付いています。これを、例えばチケット販売サービスなどのWebサーバに適用すると、非常に大きな効果が得られます。人気の高いアーティストのチケット販売が始まる時間に合わせ、自動的に他のサービスのサーバが融通され、余裕を持ったレスポンスの実現でビジネス機会の損失を防ぐことができるわけです(図2)。


図2 チケット販売サービスへの適用

※クリックして拡大図をご覧下さい
− 具体的には、どれほどのコスト削減が望めるのでしょうか。
高本: シミュレーションレベルの結果ですが、約40%の能力向上が期待できます。言い方を変えればサーバを4割減らせることになりますが、そのぶん新しいサービスを追加することができると考えていただければ結構です。

■ 管理しきれない複雑なネットワーク構成をクリアに提示

− 新規にサーバを追加する作業は、これまでかなり大変だったのですか。
垂井: 現状の構成管理は、管理者が管理台帳やスプレッドシートのソフトなどを使って各サーバがどのネットワークにつながっているのか手作業で管理しているのが一般的です。この作業は非常に煩雑であり、それゆえシステムが大規模になればなるほど日々の構成変更に管理表の入力が追いつかなかったり、正確に更新されていなかったりして、把握している情報と現状とが一致していないケースが出てきます。このため、サービス負荷の急増に対して新規サーバの追加が必要な際も、“このサーバを本当にここにつないでいいのか、このポートで間違いないのか”といった確認に時間を要し、さらに管理表をアップデートする時間も含めると、1台当たり約2時間もかかってしまうという調査結果が出ています。
 そこで私たちは、さまざまなベンダーのサーバやネットワークスイッチ、ネットワーク機器などの構成情報を自動的に一元管理できる「構成情報正規化技術」と、どのサーバがどのスイッチにつながっているかといった情報を正確に把握し、管理者にGUIで見せることができる「トポロジアナライザ」を開発しました(図3)。


図3 サーバの簡易追加技術

※クリックして拡大図をご覧下さい
− どんなに複雑なネットワーク構成でも、最新の構成をすっきりわかりやすい形で見せてくれるわけですね。
垂井: そうなんです。正確な情報がひとめで把握できるため、予想を超える負荷発生時にも迅速かつ柔軟に対応できますし、手作業だった構成管理も自動化できるため、管理者負担が大幅に低減できると考えています。今まで2時間かかっていた新規サーバの追加が、これで数分に短縮できます。

■ Harmonious Computingを具現化する技術として

高本: 「構成情報正規化技術」と「トポロジアナライザ」は、私が説明した「リソースの動的追加技術」の前提となるものと言えます。まずは物理的なサーバがどう配置されているのかを正確に把握した後、中長期予測に基づいてサービス間でサーバを動的に融通し合う。それでも間に合わない、予想を大きく超えた負荷変動に対しては、スピーディに新規サーバを追加するという一連の流れを自動化、効率化することができるのです。
− システムが自律して環境変化に即応できるという意味で、まさにHarmonious Computingのコンセプトを具現化する技術と言えますね。
高本: そのためにも今後は、製品化をめざした機能の拡充やソリューション開発などを展開していきたいと考えています。具体的には、中長期未来予測の精度向上、サービスレベルの種類を増やして、お客さまの多様なニーズに応えること、またiDCなどのなかで各企業がサーバを融通し合う新しいビジネスモデルの提案などを考えています。
− 本日はどうも、ありがとうございました。
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