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開発者に聞く



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このコーナーでは、日立製作所の研究所等で研究・開発を行っている技術テーマを中心としたコラムをお届けします。 研究員にインタビューを行い、技術テーマ解説・開発過程におけるエピソードなどを交えてわかり易くご案内いたします。
大容量のファイルを個人端末間で安全にやりとりできる
P2P情報共有ネットワークソリューション
■ ブロードバンドの普及でP2Pの環境が整う

− まずは今、P2P通信が注目されている背景と、CSSと比較した場合のメリットについて教えていただけますか。
松原: 近年、ADSLやFTTH(光ファイバ)、ケーブルテレビなどのインターネット常時接続サービスが普及してきたことで、一般ユーザーのPCがネットワークにずっとつながっている状態が一般的となってきました。ダイヤルアップ全盛の時代なら、あるファイルを相手に渡したいと思ったら、一度サーバにファイルを預けておき、受け取る側がネットワークにアクセスした際に取りに行くという方法しか考えられなかったわけですが、双方が大容量ネットワークに常時接続している場合は、直接ファイルをやりとりする方が効率的ではないかという考え方が出てきます。これがP2Pファイル共有の基本的なコンセプトです。クライアント/サーバ型システムと比べ、ファイルサーバを設置・運営する必要がないこと、サーバのストレージ容量やネットワーク負荷を心配する必要がないこと、さらにはビジネスユースでも、事業所や企業間などをまたいだシームレスなデータ共有ができることなどが、今までにないメリットとして注目を集めてきたわけです。
三木: クライアントに余裕があれば、いつでも簡単にファイルを追加できる点もメリットです。サーバにファイルデータをアップロードする手間もなく、膨大な量のファイルを大人数で共有できるので、ブロードバンドユーザーが急増している現在、キャリアやISPなどのサービス提供者から見ても、非常に付加価値の高いサービスが期待できる技術です。

■ IPv6の有効利用を促進する重要なアプリケーションに

− P2Pを適用した、大容量ファイルを共有化するビジネスモデルとしては、どのようなものが考えられるのでしょうか。
松原: 例えば一般家庭でも、デジタルカメラやホームビデオで撮ったデジタル写真やビデオなどの大容量データを扱う機会が増えています。従来なら、これら膨大なデータをサーバにアップロードして共有しようという発想は生まれませんでした。しかしP2Pなら、自分のPCのハードディスクに入れておくだけで、離れた場所に住んでいる親族や友人にも気軽に動画像を見てもらえるサービスが実現します。企業でも、社員間の情報共有を容易にし、複数の企業や事業部にわたるプロジェクトに最適な通信方式となるのです。


図1 基本システム構成

※クリックして拡大図をご覧下さい
三木: 企業機密など、非常に高度なセキュリティ性が求められるファイルなら、従来からあるファイルサーバに格納した方が適切かもしれません。しかし、作業途中のファイルや大容量のファイルなどを皆で気軽に共有したいといった、現状を補完するニーズには、P2Pならではの新たな可能性が生かせる。そう考えたのが、今回の研究開発の大きなきっかけだったのです。
 特に今後、IPアドレスに実用上制限がないIPv6が普及すれば、個人の端末機器がそれぞれ固有のグローバルIPアドレスを持ち、直接情報をやりとりするP2P通信が急速に普及していくでしょう。現状のIPv4では、グローバルIPアドレスを割り振ることができない代わりに、プライベートIPアドレスというものを付与しています。しかし、これでP2P通信を行おうとすると、直接相手の端末にアクセスするのが困難なため、「中継ピア」というグローバルIPアドレスを持つ端末に定期的に問い合わせ、自分のファイルを欲しい人がだれかを聞きに行って、相手がいればそこに転送してやるという作業が発生します。このため中継ピアへのアクセスが集中し、スケーラビリティにも欠けるという欠点がありました。それがIPv6の時代では、一気に解決するのです。その意味でも今回開発したP2P技術は、従来のP2P技術が持っていたさまざまな課題をクリアしながら、IPv6の有効利用を促進する重要なアプリケーションの1つになると自負しています。

■ 中央管理サーバがシステムを集中管理

− 従来のP2P技術には、乗り越えるべき課題があったということですね。
松原: これまでのP2P通信では、端末が自由にデータの送受信を行うため、データの機密性が低下したり、違法な用途に使われるといったセキュリティ上の危険性が指摘されていました。今回私たちが開発したのは、こうした安全性の問題を解消し、高いセキュリティのもとでのファイル共有技術です。特に重要な機能は3つあります。ひとつは「中央管理サーバ」によってシステムの集中管理ができること、2つ目は携帯電話やPDAからのモバイルアクセスを実現したこと、そして3つ目は「仮想ディレクトリ」によって膨大なファイルを整理し、ユーザビリティを向上させたことです。
− それぞれの特長を教えてください。
三木: 本システムでは中央管理サーバが、ユーザー認証、ファイルへのアクセス制御、ファイルデータや通信の暗号化、ユーザー操作のログ記録などを受け持つことで、端末間の通信を制御し、高度なユーザー管理と情報セキュリティを実現します。従来のP2Pでは、ユーザーどうしが自由にデータを交換できる一方で、サービス提供者は何が起きているのかわからない状態が一般的でした。しかし今回の技術では中央管理サーバで集中管理できるため、キャリアやISPは既存のユーザー情報や課金システムを活用して、セキュアな環境下で新たなP2Pファイル共有サービスを提供できるようになります。ビジネスユースでも、きめ細かなアクセス制御やファイルの暗号化により、安全なファイル共有が実現するのです。
松原: P2P通信は従来、端末側にある程度の処理能力がないと参加できない世界でした。しかしユビキタス情報社会では、携帯電話やPDAなどのモバイル端末を外すわけにはいきません。そこで、管理サーバの他に「P2Pファイル共有ゲートウェイ」という処理代行ノードを設置し、ここでモバイル端末と他のPC端末とを仲介をする仕組みを考えました。Webブラウザが使える端末なら、どこからでもP2Pのファイルアクセスが可能となります。


図2 モバイル端末によるファイルアクセス

※クリックして拡大図をご覧下さい
− 自分のPCにある書類や画像を、外出先でも携帯電話から見られるわけですね。
松原: 簡単にできます。本技術では、さまざまな端末がP2Pネットワークに参加できるため、サービスの幅も大きく広がる可能性があるのです。
− それも大きな特長ですね。
松原: また、もう1つアピールしたいのが「仮想ディレクトリ」機能です。P2Pのファイル共有は、ファイルが各端末に分散して置いてあるため、膨大な量のファイルを一元管理するのは非常に難しく、検索も容易ではありません。そこで本技術では中央管理サーバの中に、実際には各端末に分散しているコンテンツ情報をカテゴリ別に整理し、1つの仮想的なディレクトリ情報として提供します。キーワードでの検索性が高いだけでなく、フォルダをたどっていくことで目的のコンテンツも簡単に見つけられ、ユーザビリティが大幅に向上します。フォルダごとにアクセス制御を設定できる点も便利だと思いますよ。
− 今後の展開は。
松原: 今回開発したP2P技術は、IPv4/IPv6の双方で使えるものですが、特にIPv6のメリットを最大限に生かせるアプリケーションとして、キャリアやISP、企業のお客さまに、その可能性と付加価値の高さをアピールしていきたいと思います。

三木: 最近よく、エクスペリエンス=「今までになかった体験」という言葉が使われるようになりました。P2P通信も実際に使ってみたらこんなに便利なものだったのかと、きっと感動していただけると思います。そうしたアプリケーション開発にこの技術を役立てるため、今後も潜在的なニーズの掘り起こしやプロトタイプの開発に力を入れていきたいと考えています。


図3 利用イメージ・モバイルワーカー向けファイル共有

※クリックして拡大図をご覧下さい
− 本日はどうも、ありがとうございました。
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