− 新技術の概要を教えてください。

手塚: 簡単に言えば、電子文書の一部を秘匿した後でも、それと原文書との同一性を保証できる電子署名方式を開発したということです。公開された文書が間違いなく、原文書に墨を塗ったものだと保証できることから「電子文書墨塗り技術」と呼んでいます。
この技術は日立が、早稲田大、横浜国立大、東京電機大、電気通信大、東大それぞれの先生方との活発な議論を通して、現状の課題やユーザーニーズの掘り下げ、技術面でのご指導などをいただいた共同研究の成果となるものです。
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図1 電子文書墨塗り技術とは?
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− 具体的には、どうやって真正性保証と墨塗りを両立させるのでしょうか。
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宮崎: 方法はいくつか考案していますが、最もわかりやすい例で説明したいと思います。まず対象となる文書をあらかじめ、細かいブロックに分割しておきます。定型文書の場合には、氏名欄や生年月日などの部分のみ墨塗りできるよう指定できますし、汎用性を高くするには1文字単位で区切ることも可能です。
次に、そのブロックごとに乱数を付けた後、ハッシュ値(固定長の疑似乱数を生成する演算)を算出します。ブロックが5つあるとすれば計5つのハッシュ値が並びますが、それらを結合したデータに対し、1つの電子署名を付与します。そして例えば3つめのブロック内容だけを墨塗りしたい場合には、それ以外のブロックは元の文書を、3つめのブロックについてはハッシュ値を選び、これらのデータと署名、開示ブロックの乱数情報をあわせて開示文書とするわけです。
ハッシュ値は不可逆な一方向性関数を使って計算されるうえ、前後の文脈などとは無関係に生成される乱数も入っているため、原文を再現することはまず不可能です。このため公開文書を見た人は、墨塗り部分のデータを復元できない一方で、公開鍵を用いた電子署名の検証ソフトによって、文書自体の原本性を確認することができるのです。
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− 開発で苦労したのはどんな点ですか
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宮崎: 実は当初、ブロックごとにハッシュ値を算出する際、乱数を加えることは考えていませんでした。しかし例えば歴史的に大きな事件を伝える文書などは、前後の文脈や当時のニュースなどから墨塗り部分の内容を推測できることがあります。そして悪意を持った人が該当ブロックのハッシュ値を計算し、開示されたハッシュ値と一致するかどうか調べると、せっかく隠した部分がデータ的にも一致して、内容を保証することになってしまいます。そこで乱数を加えることで、仮に推測したブロックの情報が正しくても、結合される乱数は推測できないため、セキュリティを一段と強化することができました。
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図2 具体的方式
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