− まず、ミリ波レーダーとは何かを説明していただけますか。
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近藤: 自動車に搭載される76GHzミリ波帯レーダーは、対象物からの反射波を測定し、距離や相対速度などを検知する装置で、現在実用化されているレーザーレーダーに比べ、雨や雪、霧などの悪天候下においても高い精度を保持できるのが特長です。具体的には、「前方監視レーダー」と「近距離センサー」という2つの用途を想定しています。
まず「前方監視レーダー」では、150mぐらいまでの距離にある先行車を検知して、車間距離を一定に保つとか、危険な際には警報を出したり、アクセルやブレーキを制御します。
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近距離用センサー(この写真は製品予想イメージです)
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一方の「近距離センサー」は、20mから30mくらいまでの距離において、前方、側面や後方から近づいてきた自動車などを検知し、急な割り込みに対する危険回避など、衝突の危険性を低減するようなアプリケーションに対応します。どちらも周囲の状況認識と対応を自動的に行うことで、今後、事故防止やドライバーの利便性を支援する必須デバイスとなってくるはずです。
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− ようやく普及が始まってきた段階ということでしょうか。
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近藤: そうですね。近年、国内外で自動車の車間距離自動制御装置や車間距離警報システムなどに実用化され始めてきた段階ですが、ミリ波レーダーの民生用機器への応用はこの分野が初めてということもあり、レーザーレーダーに比べてコストの高い点が普及の妨げになってきた感があります。また、乗用車はスタイルやデザイン性も重視するため、センサーの大きさや重さも、採用される際の重要なポイントになります。このため、安全な車社会の実現に向けたシステムの普及には、その心臓部であるミリ波送受信モジュールの低コスト化・小型化が必須であると考えていました。
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クルマ装着時のイメージ図
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− 従来技術との違いを教えてください。
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永石: 日立ではすでに、高周波回路基板と平面送受信アンテナを、金属ベースプレートの表裏に配置する一体構造を採用したミリ波レーダーを製品化しています。このうち高周波回路基板は発信器やパワーアンプ、レシーバを集積化したMMIC(Microwave Monolithic Integrated Circuit)と呼ばれる実装方法を用いています。今回は、この構造の特長を生かして一層の小型・低コスト化を進めるため、現状モジュールの同軸ケーブル構造やMMIC実装方法を簡素化する方向で研究を進めました。
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新開発の送受信モジュールでは、携帯電話などにも多く使われているセラミック多層基板の上に、直接MMICを実装する構造を採用しました。つまり、高周波回路基板の機能をすべてセラミック多層基板に置き換え、金属ベースプレートと高周波回路基板をはり合わせる工程を不要にしたわけです。また、配線を多層セラミック基板の各層に立体的に配置する“多層配線構造”としたことで、モジュールの容積を低減しながら、構造を簡素化したのが大きなポイントです。
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送受信モジュール
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さらに、絶縁体に貫通穴(ヴィアホール)を設けて金属を埋め込むという「ヴィアホール構造」によって、MMICと送受信アンテナとを電気的に接続する同軸線路構造を多層基板内に作りこむ技術も開発しました。テレビのVHF用アンテナには黒い同軸ケーブルがついていますが、あれをセラミックの中に作り込んでしまったというイメージです。
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近藤: もう1つ、独自開発の「周期構造蓋」も重要な技術です。ミリ波レーダーの送受信モジュールでは、MMICやコンデンサを小さな箱の中に気密封じしなくてはなりませんが、単純に蓋で覆ってしまうと毎秒760億回も振動する76GHz帯の周波数では、送受信の電波を交錯させてしまうため、従来はそれぞれの部品を小さな箱の中に分けて、互いを見えないようにしてきました。
しかしそれでは組立が大変でコストが下がらない。そこで細かく部屋分けしなくても問題を解消できる「周期構造蓋」というものを開発し、組立を簡便化したのです。これらの技術を適用し、部品点数を極端に減らしながら組立も簡便化したことで、従来に比べ大幅な低コスト化が可能なうえ、容積で約1/5、重さは約1/10という小型化を実現しました。
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送受信モジュールの構造図
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