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開発者に聞く



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このコーナーでは、日立製作所の研究所等で研究・開発を行っている技術テーマを中心としたコラムをお届けします。 研究員にインタビューを行い、技術テーマ解説・開発過程におけるエピソードなどを交えてわかり易くご案内いたします。
紙媒体の不正コピーや情報流出を抑止する
透かし強度を調節可能な二値画像電子透かし技術
■ 情報を、埋め込む対象と一体化する技術

− 「電子透かし」とはどのような技術なのか、教えてください。
山田: 簡単にいえば、コンテンツの中に、機械には認識でき、人間にはほとんど気づかれない程度の情報を「埋め込む技術」と、その情報を「読みとる技術」のペアで成り立つセキュリティ技術です。埋め込むのは、主に作成者や配布先などの情報で、万一、不正にコピーされても後から情報を読み出して、著作権を主張したり、不正使用者を捜し出すのが容易になる特長があります。
− 暗号の一種と考えてもいいのでしょうか。
山田: 暗号は、かけられているうちは強力に内容を保護してくれますが、一度復号化すると、著作権情報などを残しにくく、コピーされてしまう恐れがあります。一方、電子透かしは情報を埋め込んだ対象と一体化することで、内容そのものは見せても、そこに著作権情報などが埋め込まれていることを相手に知覚させないといった機能があります。
− それぞれ役割が異なるということですね。
山田: ええ。暗号はデータを秘匿することに主眼を置きますが、電子透かしは、不正コピーをあらかじめ牽制したり、機密文書を漏らした人を特定するような場合に威力を発揮します。また、コピー機やスキャナなどと連動して、機密文書をコピーさせないようにする仕組みも作れます。実際には、コンテンツの内容やお客さまのニーズに応じて、電子透かしと認証、暗号、電子署名など、複数のセキュリティ技術を組み合わせたソリューションとして提案するこが多いですね。

※クリックして拡大図をご覧下さい
■ 人間の視覚特性を活用

− 今回開発された「二値画像電子透かし技術」ですが、二値画像というのは?
藤井: 白と黒で構成された画像情報全般を指しますが、ビジネスの現場では圧倒的に流通量の多い、モノクロ印刷された文書や図面、地図などがこれに当たります。日立ではすでに、カラー画像用の「Keymate/Mark」、デジタル動画用の「動画電子透かしプログラム」というハイレベルな電子透かし製品を持っており、業界内でも高い評価をいただいています。今回の技術は、それらで培った技術やノウハウを二値画像用に拡張したものです。
− カラーや動画より白黒の方が、情報を埋め込みにくいのですか
藤井: 考え方が、かなり異なります。カラーでは色彩や階調といった微妙な色彩表現が可能なため、色や明るさを微妙に変えることで情報を比較的容易に埋め込めます。しかし二値画像では、色が白と黒の二通りしかなく、情報を埋め込むには白い部分を黒にするか、白の部分を黒にするかしか方法がありませんでした。このため、情報を埋め込んだ変更点のアラが目立ち、知覚されないようにするのは非常に困難だったのです。
− そこで、新しい考え方を導入したということですね。
藤井: はい。認知科学で実証されている「人間の視覚特性」を基にし、特に「ゲシュタルトの法則」を適用しました。
− 内容を詳しく教えてください。
藤井: 拡大した文字のサンプルでご説明します。ある文字の中に「切れ目がある場合」「背景にノイズがある場合」「輪郭に、にじみがある場合」を考えます。もし、それらの条件を取り除いても、人間の視覚特性では画質劣化は招きません。これは認知科学で実証されています。さらに、認知心理学で「人間の目は単純な図形を、より単純になるように知覚する」とした『ゲシュタルトの法則』も重ね合わせると、ある文書の原本の、さまざまな文字の中にある「切れ目」をふさいだり、「ノイズ」を取り除いたり、「にじみ」を平滑化したりといった形で情報を埋め込んでも、人はその文書に画像劣化を感じないということになります。
 従来の二値画像への電子透かし技術では、文字や図形の輪郭部分にのみ着目し、そこに微妙な変化を与えることで情報を埋め込んでいました。その結果、文字の中で変更が加わると非常に目立ちやすい部分にも、一律に変更が加えられ、文字や図形として見た場合、非常に違和感を感じさせていたのです。
 一方、私たちの方法では、変更が目立たない部分を優先的に選び出しながら、最適な視覚特性によって情報を埋め込むため、画像劣化が非常に少なくなります。

※クリックして拡大図をご覧下さい
 想定される使い方としては、例えば重要施設の図面を社内で参照するたび、利用者IDを自動的に埋め込むように設定すれば、その誰かが不正にコピーして持ち出しても、後から、不正利用者の特定ができる。こうして文字でも図面でも適用できるのが大きな強みだと思います。

■ 情報を埋め込む強弱を自由に設定可能

− どれほどの情報量が埋め込めるのですか。
山田: 白黒の変化がある、約2〜3センチ四方の範囲に64ビットの情報を埋め込むことができます。日本の総人口約1億人がそれぞれ100億枚の書類に通し番号が打てる情報量です。書類の一部分だけを切り出しても、いたるところに情報が埋め込んであるので、300dpiほどのスキャナで読みとり、専用ソフトで調べれば、情報を読み出せます。
 また、今回の技術のアドバンテージは、画像の美しさを保てるだけでなく、情報を埋め込む強弱を自由に設定できる点にもあります。弱い場合でもコピーを2〜3回繰り返した程度なら情報は残りますし、強く入れれば画質は落ちる代わりに、より多くのコピーにも耐え、不正流出のルートを最後まできちんと追跡できる。こうした自由な設定が行える技術は世界初で、お客さまのニーズに応じて適用範囲を柔軟に広げることが可能となります。
− 今後の展開は。
山田: 今回は、二値画像に適用する電子透かし技術として、非常に突出した成果を示すことができました。今後は、紙を媒体とした情報追跡、機密情報流出の抑止、そして素材管理などの用途で、官公庁をはじめ、民間企業においても、ライフライン管理、金融業務など、多彩な業務シーンで活用していただけるソリューションの開発に力を注いでいきたいと思います。
− 今日はどうもありがとうございました。
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